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ミステリの祭典

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悪党パーカー/漆黒のダイヤ
悪党パーカー

作家 リチャード・スターク
出版日1985年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2019/05/09 03:07登録)
(ネタバレなし)
 プロの犯罪者パーカーは愛人クレアとともにNYで休養を楽しむさなか、見知らぬ3人の白人からおとなしくこの地を去るよう警告を受ける。間もなく今度は別の白人ホスキンズがパーカーに連携を申し出て、さらにパーカーがそれを辞退すると、次は4人組の黒人が姿を現す。彼らはアフリカの小国ダーバの改革派で、リーダ―は同国の国連代表でもあるゴノール。4人は、国民の財産をダイヤに替えて隠匿しようとする現大統領ジョゼフ・ルブディ大佐の一派から、隠し資産を奪回するためNYに来ていた。頼りになる物品奪取のプロとして、「犯罪組織(アウトフィット)」の大物カーンズからパーカーを紹介されたゴノールたちは、その彼に強盗・窃盗のコーチと作戦の立案を求め、ダイヤ奪回計画を成功させようとするが……。

 1968年のアメリカ作品。おなじみ「悪党パーカーシリーズ」の第11作目。日本では翻訳が結構いい加減な順番で出たため、1985年になってコレが邦訳された際には、なんか未訳の余り物が後回しになった感もあった。
 それゆえパーカーが第三世界の黒人たちと組む話なんて、いかにもシリーズに起伏を与えるために先にネタありきで作ったイロモノっぽい感じなのだが、実際には刊行時期の1968年を考えるなら50年代からのエド&ジョーンズの活躍を経て、65年のヴァージル・ティッブスのデビュー、69年の『褐色の肌』(レイシイ)、70年の『はめ絵』(マクベイン)などブラックパワー作品の隆盛期のど真ん中であり、これはむしろ作者スタークが時代を意識しながらパーカーシリーズを、当時のそっちのムーブメントに近づけてみた一編と見るべきだろう。
 ゴノールたちをパーカーに仲介する役には『犯罪組織』『カジノ島』に登場したカーンズと並んで、シリーズおなじみのセミレギュラー、ハンディ・マッケイも関わってくるし、ファンにはなかなか楽しい一冊ではある。
 母国ダーバで軍事鍛錬を一応は受けている面々とはいえ、強行犯罪に関してはアマチュアの連中を高額の報酬と引き換えに教育するパーカーの図は他の作品ではあんまり見られなかった趣向であり、ガーフィールドの『反撃』とかケンリックの『バニーよ銃を取れ』とかの<素人特訓もの>なんかも想起させる。ひょっとすると本作は、その手のもののなかでも結構早い方の一冊か?
 あとクレアの登場編としてはこれが都合3冊目のハズだが、早くも? ここでのちの某人気作の原型のようなことをやっていて興味深い。ネタバレになるので詳しくは言わないが、そういう意味ではシリーズの流れにひとつのポイントを刻んだ印象のある作品でもある。
 ドライで省略法の演出が効いた終盤の作劇は素晴らしい。パーカーがアマチュア勢とからみ、そのアマチュアたちの活躍まで見せ場としたため、中盤まではどっかこのシリーズらしくない牧歌的? ともいえる雰囲気が漂う本作だが、後半になっていっきに物語が引き締まる。
 シリーズのなかでは決して上位ではない一冊だろうけど、ファンがパーカーのクロニクルに何を求めているのかを、きっと再確認させてくれる佳作。

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