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ミステリの祭典

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雪の死神
エリーズ・アンドリオリ

作家 ブリジット・オベール
出版日2002年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 tider-tiger
(2019/05/09 01:03登録)
~自身が巻き込まれた二年前の殺人事件(※前作『森の死神』参照)が小説化されて一躍有名人となったエリーズ。気晴らしに雪山に出掛け、障碍者の施設に滞在していた。そこでファンと思しき者からステーキ肉をプレゼントされる。介護人のイヴェットと二人で食べようかどうしようか迷ったが、少しだけ味見してみたところ思いのほか美味だったので結局食べることにした。ところが、その肉は麓の街で起きた殺人事件に関係があることがわかった。~

2000年フランス作品。前作では指一本しか動かせなかった語り手のエリーズが本作では左手の機能を回復している。内面はあまり変わらず明るく前向き。前作での経験をミステリ作家のB・A(ブリジット・オベール)に売り込み、それが作品化されてヒットしたことにより金銭的にもだいぶ楽になり、希望がほんの少しだが見えてきている。
肉に関しては「そんなもの食うなよ」と思った。まあそれはさておき、作者の登場、障碍者施設の入所者たち、奇怪なファン、展開からキャラから外連味たっぷりで、さらにどこか歪んだ作風は相変わらずというか、パワーアップしている。語りもよい。
前半から中盤にかけてはかなり面白くて、既読オベールの中では最高作かもしれないと期待は膨らんだ。ただ、後半に差し掛かって、この連続殺人は不可能犯罪じゃないかと、決着はつけられるのかと心配になった。
そして、仕掛けが明かされて、ちょっと興ざめ。さらに怒涛の終盤はいくらなんでもやり過ぎだろうと。いかにもオベールらしいのだが。前半~中盤がかなり面白かった(7~8点)だけに非常に残念。
本作の類例はいくつもあって、本サイトでも最近そうした類例作が書評されていた(私はこの作品はあまり好きではない)。本作は完成度は高いと思う。最後の無茶苦茶も作者の狙いというか作風というかに沿っている。ただ、私は基本的にこの仕掛けは好きではないしラストにもついていけない。これを容認できる方なら、本作はかなり愉しめるのではないかと思う。ジャンルはサスペンスかスリラーか迷ったが、スリラーとした。

四肢麻痺の主人公といえば、ジェフリー・ディーヴァーの『リンカーン・ライムシリーズ』が有名だが、四肢麻痺という設定が徹底的に活かされているのはこちらの『死神シリーズ』だと思う。純粋にエンタメとして優れているのは……ライムシリーズだろうが、私はエリーズを応援したい。

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