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ミステリの祭典

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美女と野獣
ホープ弁護士

作家 エド・マクベイン
出版日1984年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2019/05/11 10:19登録)
 海辺で見たその女性は、翌月曜の朝十時十五分すぎにマシュー・ホープのオフィスにやってきた。サバル・キーの北部海岸で人目を奪った、信じがたいほど美しい姿は見る影もなく、黒と青のアザだらけ。サングラスをはずすと、片方の眼のまわりはふくれあがってほとんど眼がふさがっている状態だった。折れた鼻と歯が三本欠けた口で、彼女はミッシェル・ハーパーと名乗った。夫のジョージを逮捕してほしいというのだ。
 「彼は怪物〈モンストル〉です」「本物の怪物ですわ(モンストル・ヴェリタブル)」
ミッシェルに暴行を加えたジョージは、午前二時に家を出たまま帰っていないという。ホープはミッシェルと共に告訴状を提出し、翌朝早く電話をいれると約束する。しかし、結局その電話が掛けられることはなかった。火曜の朝七時に彼女は両手両足を針金のハンガーで縛られ、大量のガソリンをかけられ焼き殺された死体となって発見されたのだ。
 ほどなくして夫のジョージ・N・ハーパーが警察に拘束されるが、彼はホープがこれまで出会ったうちでもっとも巨大で醜い黒人だった。気の進まぬながらも彼は、馴染みのブルーム刑事の勧めでジョージの弁護を請け負うが・・・
 1982年発表のシリーズ第3作。87分署ものの第35作「熱波」と、第36作「凍った街」の間に執筆されたもの。手口も猟奇的で、人間関係も案の定ドロドロ。「傷つけられた子供」が主要モチーフの、本シリーズ全体の流れからすれば異色気味。だからと言ってそれほど面白い構図の作品ではありません。
 凶器のガソリン缶の指紋や目撃者の証言は、全て容疑者ジョージの犯行を示しており、ホープは夫妻それぞれの関係者に聞き込みを行いますが、ジョージの人格を巡る証言は矛盾しその内容はチグハグ。本人に探りを入れても奥歯に挟まったような物言いで、一向にラチが明きません。遂にホープは「ジョージを含むすべての証言者たちが噓をついているのではないか」と思い至るのですが、その矢先に彼は刑務所から脱走し、やがて第二の殺人が――
 原典となる童話との暗合も少なく、これなら次作「ジャックと豆の木」の方が良かったなあ。前作「黄金を紡ぐ女」がたまたま成功しただけかな。7作目の「長靴をはいた猫」が一作飛んだままにしてあるけど、過度に期待しない方が良さそう。

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