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ミステリの祭典

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再婚旅行

作家 佐野洋
出版日1963年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2019/04/27 19:57登録)
(ネタバレなし)
 昭和37年。「わたし」こと、酒場「パンセ」に勤めるホステスの市原紀子(源氏名・安子)はその夜、店に来た客・大仲吾一の顔を見て驚く。大仲は、眼鏡とパーマという相違こそあれ、紀子が5年前に別れた夫・河原田重吉と瓜二つだったのだ。何らかの事情で河原田が変名を用いて正体を秘めて会いに来たのかと探りを入れる紀子だが、確証は何も得られない。他人の空似か? それとも!? 疑念を深める紀子は情人である「東都新報」の外報部記者・川北に事情を話し、大仲そして現在の河原田の身辺を調べてもらうが、やがて不審な事実が浮上してくる……?

 ややこしげなプロットだが、作中で仕組まれていた悪事そのものは底が割れれば存外にシンプルなもの。ただしその犯罪を悪事の中核から外れた座標に立つヒロインの視点から語っていくことで、スパイスの利いたストーリーに仕立てている。この辺りはやはり上手いということか。
 とはいえ犯罪そのものは半世紀前だからこそ通用したものであり、現在の捜査科学なら絶対に露見してしまうだろうけれど、その辺は言うのは野暮だね。
 そういった時代的な甘さを看過しても、細部の端々で「そううまく行くだろうか……」というツッコミどころは何カ所か感じたが、ストーリーそのものをあまり長くしなかったおかげで良い意味で逃げ切った感じではある。ちょっとだけ昏いロマンを感じさせる、とても昭和っぽい作品。 

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