home

ミステリの祭典

login
闇からの呼び声

作家 高柳芳夫
出版日1985年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2019/04/22 19:10登録)
(ネタバレなし)
 その年の6月下旬。都内の音大・東明学園大学に在籍する多香城由里は、父の秀信の様態が悪いため、夏休みになるのを待たずに故郷の津軽に帰参した。三女の由里は6年前に母と事故で死別し、そしてつい少し前に長姉・絵里を精神分裂病の末に失っていた身である。残る家族は、由里のほかに元外交官の父・秀信と美大に通う次姉の麻里の2人だけだ。だがある夜由里は、およそ半年後の来年3月20日に自分が姉の麻里を絞殺するという明確な記述を自分自身の日記にしたためていた! やがて由里は、多香城家の血縁者にかつて洞爺丸の遭難事故を予知した者がいたという話を父から聞き、自分の自動書記=未来の予知が現実のものになるのではと恐怖。周囲から精神の異常を疑われないように警戒しながらも、父とともに対抗策をはかろうとするが……。

 初出は1984年の「小説推理」10・11月号に二回分載された長編で、ずばり、アルレーかボワロー&ナルスジャック調のフランスミステリ、または日本なら一時期の日下圭介あたりを思わせる作風の内容。
 ヒロインの実姉が精神分裂病を患ったすえに非業の死を遂げ、その因子が遺伝的に自分に影響するのではとおののく主人公の恐怖心が物語の底流にあるが、30年前(文庫版が1989年刊行)ならともかく、この種の主題は現在ではデリケートで扱いにくいかもしれない。
 じわじわと現実のものとなってくる予知という、通常のミステリの枠内、リアルで物理的な解法では捌きにくいテーマを真っ正面から扱っただけに、物語が最終的にどこに着地するのか、やはりある程度はファンタジーっぽいスーパーナチュラルな要素が導入されるのか、それとも……と、終盤までテンションが落ちないのは本作のこの設定ならではの強み。
 ネタバレはもちろん書かないけれど、個人的にはおおむね面白く読めた。
 評点は6点か7点か迷うところもあるけれど、ちょっと(中略)な印象もなくはないので、この点数で。それなりの、佳作以上の作品ではあるけれどね。

1レコード表示中です 書評