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ミステリの祭典

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脳人間の告白
『浮遊』を改題

作家 高嶋哲夫
出版日2016年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2019/04/21 22:05登録)
日本の脳研究の最前線を走る医師・本郷を襲った突然の自動車事故。気が付けば彼は一筋の光もない暗闇の中にいた。感覚のない身体、無限にも感じる時間、そして恋人・秋子への想い…次第に彼の精神は、恐怖に押し潰されそうになる。やがて彼は、自らの置かれている驚愕の状況を知り絶望する。「何てことをしてくれたんだ!」―突然の刑事の来訪で揺れるK大学医学部脳神経外科研究棟三〇五号室を舞台に、衝撃の物語が幕を開ける!
『BOOK』データベースより。

生きているのか、死んでいるのか、生かされているのか・・・。
これは脳外科医本郷が事故である状況に置かれてからの、独白をベースにした物語です。彼の元に現れる同僚、恋人、刑事、肉親らを本郷は観察し、独自の目線である時は回想に耽り、又ある時は己の境遇を嘆き絶望します。
これ以上は何を書いてもネタバレに繋がりかねませんので控えますが、出来れば何の予備知識もなく読むのが最善です。勿論、解説すらも先に読んではなりません。と言うか、ここまで読んでしまった以上、そうも行かなくなったわけですが、余程の物好きな人しか読まないでしょうから、私が多少とも内容に触れたことは許していただきたく思います。でないと書評になりませんので。

重いテーマを扱っていますが、決して小難しい訳ではなく、むしろ淡々とした文章で読みやすい部類だと思います。専門用語も少なからず見られますし、多分に哲学的な面も内包してはいますが、エンターテインメントとしても十分機能しているのではないかという印象を受けます。いずれにせよ色々と考えさせられる異色の作品なのは間違いないですね。

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