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ミステリの祭典

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天使の街の脅迫者
別題「リトル東京殺人事件」「ロス・リトル東京殺人事件」

作家 楢山芙二夫
出版日1983年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2019/04/13 08:53登録)
 アジア系の民族に係わる全ての事件を扱う、ロサンジェルス警察アジア課特別機動隊〈タスク・フォース〉。日系三世チームリーダーの一人ダン中島は、午前一時五十三分、寝室でスタンリー緒方隊長からの緊急連絡を受けた。コード一八七(ワン・エイティ・セブン)―― 殺人。
 日系居住地区リトル東京の中心部、一年半ほど前に落成したばかりのウェラーコート・ショッピングセンター中庭のプールに、若い女の全裸死体が浮かんでいたのだ。頸部に索状痕が見られることから、死因は絞殺。モンゴロイド系の二十二、三歳の女性で、昨夜の午後七時から八時までの犯行と思われた。被害者は妊娠三ヶ月で殺される直前に性交しており、身元は一切不明。
 リトル東京では今年に入って不法就労者の一斉取り締まりが三回行われており、最後の取り締まり日は事件の前日。移民局に対する抗議の犯行という線も無視できない。ダンを始めとするアジア課チームは第一刑事部屋を指揮するギルバート警部補に協力し、リトル東京殺人事件に立ち向かう。
 「小説推理」誌掲載分を全面改稿し上梓したもの。1982年から1983年にかけての連載かと。代表作「冬は罠をしかける」の次作で警察小説に挑んだものですが、作者の資質的には不向き。リサーチは徹底していますが、主人公と思われるダン中島のキャラクターもいまいちパッとせず、相棒であり親友という設定のハリー北野以下、アジア課メンバーもストーリーに埋没気味。隊長スタンリー緒方の存在感に至っては雲か霞の如し。乾いたタッチで個々のキャラクターを立てまくる力量は、この時点の作者にはどうやら無かったようです。
 バブル前のまだ日本がぶいぶい言わせてた時期に、日系ビザ無し労働者のアメリカ流入を扱うなど問題意識は高いのですが、硬質かつセンチメンタルな筆致でキャラクターに感情移入する作者の持ち味が消えてしまっているので、あまり推奨出来る作品ではありません。警察小説ではなく、前作同様ロスマク風のハードボイルドとして描くべき題材だったと思います。

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