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ミステリの祭典

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朝を待とう

作家 樹下太郎
出版日1963年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2019/04/26 19:43登録)
 1963年刊行の第十一短編集。デビューから数年余りで各誌に切れ間無く執筆しまくった樹下ですが、本書はその中から「中学一年コース」「高校コース」「美しい十代」など学習誌掲載作品ばかりを集め、なぜか一般向けとして刊行されたもの。1961年から1963年にかけて発表された一中編三短編を収録。
 樹下といえばネチネチと描かれるサラリーマン社会の憤懣や学歴コンプレックスが定番ですが、収録作はいずれも中高校生対象なのでもっぱらしみじみ系。多少食い足りない面はありますが、かといって手抜きはありません。
 最も長い表題作は、両親に先立たれた三人兄妹の長男が書き置きを残して熱海で投身自殺した事件の謎を、残された弟妹が婚約者未満の同僚女性と共に探るもの。暗号めいたメモ書きなどが出てきますが、たいした事はない。
 それよりも出来が良いのは最も発表年代の古い短編「蛇」。高校卒業まぎわに集まった仲良し五人組の写真撮影で、一人の女生徒が崖から転落した事件を扱うものですが、探偵役を務める女子高生の推理がなかなか細かい。結末はやや腰砕け気味ですが、ジュブナイルと考えればこれもアリでしょう。
 他は黒子コンプレックスを扱った「霧のふかい夜」。感動系と見せ掛けた逃走劇とその結末「海のフィナーレ」の二編。前者はまあそこそこですかね。おまけ的な短編集なので読むもよし、読まぬもよし。いずれにしても大枚はたいて購入するほどではないと思います。

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