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ミステリの祭典

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ソロモンの桃

作家 香山滋
出版日1977年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2019/03/17 21:02登録)
桃源社の後を受けて、小栗夢野久生で「異端作家」の鉱脈をアテた現代思想社教養文庫には、評者お世話になったものだ...で、小栗夢野久生に続く「異端作家」に選ばれたのは香山滋・橘外男・山田風太郎だったが、こっちはそう商業的にはうまくいかなかった印象は強い。まあそれでも香山滋は取り上げたいな。で、河出文庫で現役で手に入る「海鰻荘奇談 香山滋傑作選」で惜しくもページ数から収録できなかった中編の名作「ソロモンの桃」「怪異馬霊教」を本書が収録するから、補完の意味もあって読む価値が高い。それぞれ100ページ内外のボリュームがあるから、世界をちゃんと展開できていて読み応えがある。なるほどな「異端ぶり」を堪能できる。
「ソロモンの桃」は珍獣ハンターを生業とする日本人冒険家が、印度獅子の秘密と共に、それを追って消えたフォーンソルプ大佐を追って、ダンガ砂漠に挑む話。「ソロモンの桃」で示される古代ユダヤの王ソロモンの秘宝と、それを守護する怪老人ラケル、その娘で花の化身のような少女ハタ、妖艶美女で主人公への愛が重いへレア、といったキャラが主人公に絡み、最後はラケル率いる印度獅子に騎乗する秘宝守護部隊と、フォーンゾルプ大佐率いる象部隊との合戦にまで及ぶ。この人、エロはあっても陰惨さは薄いのが体質のようで、カラッとした男性的な冒険譚になっている。剣と魔法の蛮人コナンに近いテイスト。
「怪異馬霊教」は...というと、小栗虫太郎の「白蟻」の背景になった邪教が「馬霊教」で、まず間違いなくそこから貰っている。本作だと白蟻じゃなくてガロア虫が主人公を導いて、旧家の因縁話から地下の邪教の神殿を訪れることになる。邪教、といっても全然邪悪でないが、その世界観が本当に異界感の強いものである。ご神体を礼拝するのに、体の関節を自分からすべて外して

彼らが、骨を抜かれて、あたかも銭湯の板の間に脱ぎ捨てられた衣類の固まりのように変化して...

と、死を迎えるときもこの最小サイズで墓に収まることになる。主人公はこの因縁に深く組み込まれていて、この地下の異教の後継者となる...こっちは少しラヴクラフトの「インスマスの影」みたいな雰囲気があるが、奇怪ではあっても悍ましくはない。
まあこの二編が読みどころ。あとイカのように周囲に合わせて体の色を変えて透明になる能力&顔を自在に変化させて他人になる能力を描いて、一番「探偵小説」風だがとっ散らかった印象の「白蛾」、犯罪心理小説風の短編「殺意」に、河出文庫にも収録された因縁話のような「蠟燭売り」を収録。

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