(2019/03/15 22:48登録)
(ネタバレなしです) 28年に渡る教職を引退した米国のジュリア・バックレイは2006年にコージー派ミステリー作家として新たな道を歩み始めていくつかのシリーズ作品を世に出していますが、日本に初めて翻訳紹介されたのは2015年に新たなシリーズとして出版された秘密のお料理代行シリーズ(本国でも「Undercover Dish Mystery」として知られています)のデビュー作である本書です。ゴーストライターならぬゴーストケータラーとして依頼人のために料理を作る(公式には依頼人が料理したことになっています)ライラ・ドレイクを主人公にしたミステリーですがライラが重大容疑者になるわけでもなく、かといってそれほど積極的に犯人探しをしているわけでもなく、いくらコージー派といっても緩すぎるプロットに感じました。それでも12章での楽しく華やかな雰囲気の前半と突然緊張感が高まる後半の対照はなかなか読ませますが。謎解きとしてはほとんど動機だけで犯人を決め付けている推理があまりにも弱く、コージー派によくあるパターンですが犯人の自滅的な行動で解決してしまうのが物足りません。それにしても「秘密のお料理代行」が次作でも継続できるのか気になる締めくくりですね。コージーブックス版の登場人物リストには載ってませんがライラの両親がなかなかいい味を出しています。
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