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ミステリの祭典

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魔王サスペンス劇場 土けむりダンジョン、美人勇者殺し

作家 丹羽春信
出版日2016年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2019/03/14 18:36登録)
(ネタバレなし)
 どこかの異世界。レジェンド級の勇者ラトから、その強大さを称えられた魔王ルート。200歳前後の寿命を重ねながらも容姿と精神年齢は10代の少年のような彼は、自分を討伐しようとする勇者たちのパーティを28年ぶりに迎える。だが一瞬、魔王の間が暗闇に包まれた直後、5人の勇者の中で最強格の女性レクシアの体を長剣が貫いていた。彼女を殺した者は、勇者たちと魔王を含めてこの中にいる? 一同は互いの推理と思いつきを交換するが。

 作者自身があとがきで「ミステリー風味のドタバタ・ギャグ小説」と語っているからマトモなミステリ作品として評価するべきではないかもしれない。ただしそれでも少なくとも途中までは、徐々に明らかになる被害者の意外な顔とその上での矛盾、各容疑者の動機を精査していくなかで見えてくる疑念、その繰り返し…などなど、普通のフーダニットパズラーとして読んでも割と面白い?
 異世界ファンタジーの条理として主人公格の魔王ルートが用いる魔法も事件に関係する過去のエピソードを眼前に引き寄せながら、その上で随所に覗く複数の矛盾や疑問点から真相を隠蔽する要素を切り崩しにかかる。ここまでやるんなら、全体の味付けは異世界ドタバタコメディでも別にいいけれど、事件そのものはまっとうに(異世界の条理にもとづいたとしても)ロジカルにマトモなミステリとして決着させてほしかったなあ、と。
 いや、作中世界では一応はロジカルにカタが付くんだけどね、そこに行くまでが読者との知恵比べになってない。この作品特有の魔法ルールとか世界観とか、伏線や前振りもなしに、いくつかいきなり飛び出してきちゃってるので。
 うーん、もったいないなあ。最後の意外な真相を見ても作者は結構、新本格的なミステリセンスはありそうなんだけど。編集者の方でマトモな謎解き作品にすることはないよって、ブレーキかけちゃったのかしらん。あるいは何らかの制約(時間的な締め切りとか、伏線を入れるので紙幅を費やしちゃいそうとか)で作者自身が断念したか。どっかに変わったフーダニット(っぽい? 一冊)がないか、という人は、一回読んでみてもいいかもしれない。最後まで楽しめるかどうかの保証はできないけれど(汗)。

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