強襲 新・競馬シリーズ |
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作家 | フェリックス・フランシス |
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出版日 | 2015年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 雪 | |
(2019/09/11 18:12登録) シティの金融サービス事務所〈ライアル・アンド・ブラック〉でファイナンシャル・アドバイザーを務める元騎手ニコラス・フォクストン。彼が同僚ハーブ・コヴァクとグランドナショナル観戦に出かけたその日、事件は起こった。開始三十分前に隣席のハーブが心臓に二発、頭部に一発、近距離からいきなり銃弾を三発撃ち込まれて殺害されたのだ。発砲者は目的を達するとすぐさま身をひるがえし、混乱する群集にまぎれて消えてしまった。 もちろん、レースは中止。全てのテレビ・カメラから死角になる地点を選んでいた事から、殺しのプロの手口だと思われた。陽気で事務所の誰からも好かれていたハーブに、六万人以上の観客の目の前で射殺されるいわれは無い。だがフォクストンは彼のコートのポケットから、"言われたとおりにするべきだった。いまさら後悔しても遅い"と記されたメッセージを発見する。ならばハーブは正しい標的だったのだ。彼には暗殺者に狙われるようなわけがあったのか? そして、その理由とは? 遺言執行者に指名されていたフォクストンは、ハーブのクレジットカードの利用明細やマネーホームの支払伝票から、彼が英国で開設したクレジット口座をアメリカ人に提供し、インターネットギャンブルやオンラインカジノを利用させていたことを知る。米国では禁止されたIT賭博の運営。グランドナショナルでの惨劇の原因はこれなのか? フォクストンは更に残されたデータの分析を進めるが、白昼堂々ハーブを屠った恐るべき殺人者の手は、やがて彼の元にも伸びてくるのだった・・・ 父ディックから執筆を引き継ぎ、息子フェリックス・フランシスが2011年に発表した新・競馬シリーズの第一作。原題"GAMBLE"。毎年一作のペースで上梓され、2019年9月現在シッド・ハレー登場の三作目"Refusal"(2013)を含む9作が刊行されています。もう中堅以上の作家ですね。日本では売れ行きが悪かったのか、最初の一作のみで打ち止め。少々もったいない気がします。 主人公はグランドナショナルの優勝経験も持つ障害騎手でしたが、チェルトナムのレースで脊髄を損傷し若くして引退。筋肉だけで首を支えている状態で、日常生活には全く支障はありませんが落下や転倒などもってのほか。びくびくしてはいませんが、もしも?という気持ちは常に持っており、この状況が緊張感に繋がっています。その割に結構アクションするんですけど。終盤にはディックの処女作「本命」を意識したと思われる、追いつ追われつの乗馬チェイスもあります。 射殺事件と平行しフォクストンの顧客である乗馬騎手ビリー・サールが、緊急に十万ポンドが必要だと口座の解約を迫ったのち轢き逃げに遭い、また上司グレゴリー・ブラックのファンド運用に疑いを抱いた大口顧客、ジョリオン・ロバーツ大佐も内密に調査を依頼してきます。ブラックのPCにアクセスしたフォクストンは亡きハーブも同じデータを覗き見していたことを知り、ここでIT賭博とファンド詐欺のどちらが本筋かという事に。 変な絵ばかり描く恋人クローディアの行動も何かおかしいし、公私共にいっぱいいっぱいな主人公に襲い掛かるトラブルの釣瓶打ち。暗殺者を返り討ちにした後は少々弛みますが、最後は立て続けに意外性を見せてくれます。 出来栄えは「祝宴」以上「審判」以下。前作「矜持」はアレでしたが、この新シリーズに関しては杞憂に留まりました。アッチでの評判も良いようなので、ハレー登場の第三作だけでも出版してくれないかな。 |