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ミステリの祭典

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断片のアリス

作家 伽古屋圭市
出版日2018年02月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 ミステリ初心者
(2026/06/06 23:37登録)
ネタバレをしております。

 終末世界のVR空間内で事件が起こるミステリです。非常に特殊な設定にひかれて購入。
 VRというと、岡島二人のクラインの壺や、映画マトリックスなんかが思い浮かびます。また、アリス殺しなんかの雰囲気も感じますね。本作はさらに一人に一つのAIがサポートについている感じです。
 SFや、現実離れした設定のミステリは多くあります。ミステリは設定の説明が重要になることが多いですが、変に説明に傾きすぎず、物語の進行に合わせて自然に説明がなされるとよいです。その点本作はとてもよかったです。赤エビ亭に入ってからがミステリとしては本番なのですが、その道中のファンタジー冒険パートでも少しずつVR内でできること・できないことの説明がなされます。
 中盤からは一気にサスペンス的な要素も入ってきて、殺し合いが発生します。非常にテンポがよく、緊張感もありました。変にグロ過ぎないですし、読みやすかったです。
 ラストには隠された要素が明かされ、ドンデン返しがあります。読後感も悪くなかったです。

 推理小説的要素について。
 残念ながら、本格度は低かったです; なにを本格と呼ぶのかは人それぞれですが…。
 好みの話かもしれませんが、このVR空間とAIの仕様を殺人トリックか推理のロジックに組み込んでもらいたかったです。ハルがそれらを利用してLKを騙し討ちにするシーンがあり、その点は良かったのですが、他はそれほどうまく活用されているように見えませんでした;;

 総じて、読みやすく、ファンタジーともSFともとれる作風が面白くよかったです。本格推理小説として読まなければいい本に違いないです。が、ミステリ党の私はやはり少し残念に思ったりもしますw

No.1 6点 人並由真
(2019/03/07 19:29登録)
 西暦2130年前後。人類は、地球全体を襲ったかつての大災害のために総人口の大半を失っていた。寒冷化した地球全土で暮らす人々は「アリス」と呼ばれる仮想世界を構築し、もうひとつの現実としてその中でも生活する。今では多くの人間が現実ではなく、そのアリスの中で就業して収入を得るほどだった。そんなある日、「わたし」=「ハル」こと椎葉羽留は何者かの意志によってそのアリスの通常世界と途絶された、別の電脳クラスタに放り込まれ、そこでピノッキオ風のパペットのようなアバターを与えられる。ハルは同じような立場の男女たちと出会い、ともに、謎の意志が提示するクエストに向かっていくが、そんな彼らの中で<連続殺人>が発生。仲間がひとりひとりと消えていく。

 持ち芸の幅の広さを誇る作者の、今回はSF設定のフーダニット。<謎の意志によって集結させられた見知らぬ者たち>という『そして誰もいなくなった』を思わせる、クローズドサークルものの変種といえるシチュエーションが用意されている。
 特に作中人物が次のステージに移行する時は仲間の誰かが死ぬときというシステムが謎の意志によって設けられ、そのために登場人物は、お互いが現状を打開するために誰かを殺そうという殺意を秘めているのでは? という疑心暗鬼にも駆られる。この辺のサスペンスの盛り上げはなかなか効果的だ。

 特殊な設定ながら、フーダニットのミステリとしては存外に普通の作りで、ことさら本作ならではのSF設定は謎解きにはからんでこない。通例の現実の現代を舞台にした謎解き作品でもありそうな手がかりと伏線から、真犯人は導き出される。その辺は謎解き作品として手堅いともいえるし、意外にフツーだなという感覚もなくもない。
 ただし本作のさらなる価値は、終盤のもうひとつの意外性にあるだろう。決して斬新なものではないネタだろうが、物語との親和性は非常に高く、独特の結晶感を感じた。深い余韻に包まれながらページを閉じることができる一冊で、佳作~秀作。

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