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ミステリの祭典

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凡人の怪談

作家 工藤美代子
出版日2018年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2019/02/26 11:28登録)
怪談の肝は語り口にある。これは小説だけでなく、実話怪談や怪異を扱ったエッセイでも同じだ。いや、むしろ小説ではない方が、書き手の文体や言葉選びで、その怪異の怖さや不思議さ、切なさやほのかなユーモアの味わい・・・つまりその怪談の旨味に大きな差がついてくる。実話は創作と違って明快な起承転結がないし、怪異の正体や因果がはっきりわからない=謎解きがないことも多いので、出来事の経緯を描く文章に味がないと、何か中途半端だなあという消化不良感が残ってしまいがちなのだ。
また実際に起こった出来事を書く場合は、それが書き手の体験談であるか、第三者から聞いた話であるかで、その怪異との距離感が変わってくる。この距離の計り方が上手な人の手にかかると、「ホテルの客室に幽霊(らしきもの)が出た」とか、「不動産探しで事故物件に当たったらとても怖い思いをした」等々のありふれた話でも、まったく読み心地の違う新鮮なものになるから面白い。
本書の著者の工藤美代子は、語り口も怪異との距離の計り方も絶妙な怪談エッセイの名人だ。

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