home

ミステリの祭典

login
不死人(アンデッド)の検屍人ロザリア・バーネットの検屍録 骸骨城連続殺人事件
アンデッド検屍人 ロザリア・バーネット

作家 手代木正太郎
出版日2019年02月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 ROM大臣
(2023/09/07 13:39登録)
主人公のひとりクライヴと美少女のロザリアが訪れたエインズワース伯爵家の城には、祖先が吸血鬼になったという呪われた伝説が存在している。
作中の世界は、不死人などの超自然的な怪異が存在しており、作中人物たちもそのことを前提として行動している。にもかかわらず、連続殺人の謎解きは意外なほど堅実で合理的。ロザリアによる真相究明は、京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」における「憑物落とし」を連想させる。
一旦すべてが明らかになったかに見えた後に浮上してくる真相の構図も戦慄的で、ホラーと本格ミステリの融合としてよくできている。

No.1 7点 人並由真
(2020/01/13 17:39登録)
(ネタバレなし)
 吸血鬼やグール、そして魂なき動く死体「コープス」などの不死人(アンデッド)が跋扈する異世界。「俺」こと「不死狩り人(アンデッドハンター)」の巨漢クライヴ・アランデルは、「アンデッド検屍人」を自称する妖しい美少女ロザリア・バーネットとともに、吸血鬼の血族の居城と噂される古城「骸骨城」へと赴く。そこは200年前に不老不死を追求した当時の当主デズモンド伯爵の怪談が残り、そしてその妻エヴァ夫人の幽霊が今も徘徊すると評判だった。「骸骨城」の現当主にして城主エインズワース家三兄弟の長男、そして超美青年のセシルは、先日他界した母カリーナの遺志によって三人の花嫁候補と対面し、その中の誰かと婚姻を結ぶことになっていた。しかしそこに、さらに新たな花嫁候補が登場。だがくだんの四人の花嫁候補が怪異な状況の中で次々と絶命し、そしてそのそれぞれが……。

 異世界を舞台にしたフーダニットの謎解きパズラー。これも最近の一部のTwitterで話題になっているようなので、読んでみた。
 古城の舞台装置を活かした殺人トリックはちょっと興味深く、殺人手段のいくつかには、それぞれカーの複数の長編をなんとなく想起するようなギミックまで導入されている。
 とはいえ異世界パズラーとしての本作のキモは、この世界観と登場人物の設定ならではのクレイジーな動機。一番近い感覚でいえば、白井智之の諸作に登場する、犯行に至るまでのぶっとんだロジックの道筋あたりか。
 あと読み終わったミステリファンの大半は、真相を認めてそこで改めて、新本格派の某有名作品を思い出すだろうけど、そちらとは似た器と具材ながら、本作ならではの謎解きミステリのオリジナリティーを確保しているのは間違いない(特にその前述の、動機に至る思考の組立てにおいて)。
 作品の後半、ある種のキーアイテムとなる物品の逆転図もうまい。
 
 特殊な世界観を活かして、もう何冊かは良い意味でイカれたパズラーを読ませてもらえそうな気もするので、続刊も楽しみにしていきたいシリーズ。

【誤記・誤植】
135頁3行目
エヴァ夫人(誤)
エイダ夫人(正)
……再版か文庫化の際に直しておいて下さい。

2レコード表示中です 書評