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ミステリの祭典

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虚の聖域 梓凪子の調査報告書
梓凪子シリーズ

作家 松嶋智左
出版日2018年05月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 HORNET
(2019/02/18 21:25登録)
 元警察官にして探偵の梓凪子の、甥・輝也がデパートの屋上から転落して死んだ。輝也の母である凪子の姉・未央子は、学校でのいじめによる自殺を疑い凪子に調査を依頼する。しかし凪子と姉・未央子は決して友好な関係とは言えず、むしろ幼いころからの犬猿の仲。断りたい一心の凪子だが、結局凪子が最も嫌う未央子の圧力には逆らえず依頼を受けることに。
 半ば渋々調査を始めた凪子だったが、調査を進める中で、何かを隠していそうな学校や輝也の同級生の態度に触れていくうち、その探偵魂に火がついていき―

 第10回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。巻末の解説で島田荘司氏が「女ハードボイルド」の傑作として絶賛している。
 そうしたミステリ系譜上の評価は正直分からないが、事件の謎自体の魅力と、物語の下地となる人間関係設定が面白くて、読み進めるのに飽きない快作であることは肯ける。依頼主である姉との確執が物語に絶妙な味付けをしており、その姉を含めた兄妹関係の様相が泥臭くてしかもありがちで面白い。
 謎の解明というミステリとしての要素についても、主人公がつかんだ手がかりを丁寧にかつ上手く意味ありげに提示していて、読者の追究の興味を削がない。真犯人の解明についてはちょっと飛び道具的な感じはあるが、ミステリ以外の要素でも楽しませてくれていたのであまり不満に感じなかった。
 唯一、主人公・凪子の警察官時代の失態をもっと具体的に知りたかったが、どうやらシリーズ化されそうなのでその中でおいおい明らかになっていくのかと期待する。

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