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ミステリの祭典

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小指物語

作家 二宮敦人
出版日2012年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2019/02/17 22:21登録)
「死ぬ前に、いろんな人の自殺を見てみたら」。僕がビルの屋上から飛び降りようとしたとき、小指が変な方向に曲がった男に止められた。彼は、ネットで評判の「自殺屋」だった。最初に見せてくれたのは、志願者の女子高生を“壊してあげる”瞬間。やがて男は「自殺大会」を主催する。そこでは何が行われるのか?そして、彼の驚くべき正体とは!?―。
『BOOK』データベースより。

常日頃から思っているんですが、作家という職業の人間は小説を書くために生まれてきた、選ばれた人々なのではないかと。本作を読むとこの二宮敦人も紛れもなくその一人だと実感せずにはおられません。どこからこのような突飛な発想が生まれるのか、脳細胞を覗いてみたくなりますね。死生観が変わるところまではいかなくても、色々考えさせられます。
これは自殺という行為をとことん突き詰めて、生と死を見つめ直し、命の起源から死に至るまでを究極まで追及した作品となっています。その道中にはあとで紹介しますが、かなりイカれた人間が出てきてストーリーに起伏をもたらしています。
ホラーサスペンスではありますが、ミステリ的な仕掛けも施されており、最後の最後までエンターテインメントとして十分楽しめると思います。私がああだこうだと書いても誰も読まないでしょうが、取り敢えずお薦めしておきます。


【ネタバレ】


先に述べた一風変わった人物たちの紹介をしましょう。

0から一回づつ1を足していって、1億回目に本当に1億になるのかを検証している検算君。
地球が傾いていると肌で感じ、それに合わせて常に45度上体を傾けているヘシオリ君。
自分の身体と同じように空が痒いと、窓ガラスを掻き毟り、薬を塗りたくるガリガリ君。

ああ、別に大層なネタバレではありませんけれど。ここまで読んでしまった人でも、本作は勿論存分に楽しんでいただけますので。

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