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ミステリの祭典

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新・二都物語

作家 芦辺拓
出版日2018年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2019/02/13 10:18登録)
近代史を背景に、2人の男の人生が活写されている。
東京で貧乏書生をしている柾木謙吉は、関東大震災をきっかけに、別人に成りすました。イギリスへの留学を経て、内務省に採用された彼は、映画の検閲係となる。
一方、大阪の銀行家の息子の水町祥太郎は、震災後の東京に行き、救護活動に従事した。だが故郷に戻ると、取り付け騒ぎで銀行が業務停止。やがて彼は、映画産業に身を投じるのだった。
震災後に顔を合わせた謙吉と祥太郎は、その後も人生を交錯させながら、東京と大阪で、それぞれの道を歩む。後半になると、新京と上海に舞台が広がる。冒険・ロマンス・サスペンス・・・。二つの都市を背景に、2人の男が繰り広げる、骨太のドラマが堪能できるのだ。
また、映画が重要な題材になっている点も見逃せない。庶民の娯楽として発展した映画が、国策の道具になっていく様子が描かれている。波乱万丈のストーリーと、真摯なテーマが融合した作品なのだ。

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