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ミステリの祭典

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恐怖の構造
平山夢明

作家 評論・エッセイ
出版日2018年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2019/02/11 06:40登録)
(ネタバレなし)
 著者・平山夢明の実作はまったく未読なのだが、本書は複数メディアのフィクションにおける「恐怖」や「不安」を解析・考察するとかという内容に興味を惹かれて、読んでみた。恐怖はスーパーナチュラルなものに限らない、無辜の市民としてのアイデンティティを喪失していく『ゴッドファーザー』や『タクシードライバー』なども該当、などという辺りは、割と当たり前過ぎる感じだが、フランケンシュタインの怪物が吸血鬼や狼男と違う点の論考、とか映画『エクソシスト』のフリードキン監督の狂気ぶりの紹介などは面白かった。
 個人的にはもうちょっとフィクションを離れた「恐怖」の観念の分析とかしてほしかった気もする(それなりには著述してあるが)が、創作物の中でのという枠組みの話題だからこれでいいのか。そっちに関心があるなら、心理学の本でも読めばいいのかもしれんし。
 平山作品のメイキング的な部分も多少あるので、ファンの方は読んでみてもいいかとも思う。

 ひとつ気になったのはスティーブン・キングの話題で「キングは『クージョ』(1981年)でバッドエンドをやって、これ(長い小説に付き合ってくれた読者に後味の悪いクロージングを読ませる作法)はよろしくないと懲りた」という主旨の記述があるけれど、それは正しい情報&認識なんでしょうかね。だって1983年のキングのあの作品とか……。

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