テレビ探偵 改題『テレビじゃん!』 |
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作家 | 小路幸也 |
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出版日 | 2018年12月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2019/02/07 16:32登録) (ネタバレなし) 1969年。昭和のテレビが元気だった時代。「僕」こと本名・葛西靖之、19歳の若手コメディアン「葛西チャコ」は、人気獲得中のコミックバンド「ザ・トレインズ」の見習いタレントとして芸能界デビューした。正規メンバー5人+チャコの「ザ・トレインズ」は、土曜夜8時のゴールデン枠番組「土曜だ!バンバンバン!」の主役として児童層を中心に日本中を熱狂の渦に巻き込むが、彼らの周辺の芸能界ではさまざまな事件が……。 言うまでも無く『8時だョ! 全員集合』とザ・ドリフターズをモデルにした、昭和レトロオマージュの芸能界ミステリで、全5編の連作短編集。主人公チャコは当然志村けんのポジションだが、荒井注時代のメンバーをモデルにした旧ドリフ5人のほか、千葉真一や天地真理、ザ・ピーナッツやキャンディーズほかを思わせる<いかにも>なキャラクターも続々登場する。 ミステリとしては芸能界版「日常の謎」的な作りで、本の帯には主人公チャコの成長劇という意味合いで「青春ミステリ」と謳ってある。まあどれでも間違いではない。現実のドリフの歩みになぞらえるなら、荒井注が抜けて志村けんが昇格する時代までが描かれる。 可愛い作りのミステリだけど、自分みたいな昭和テレビっ子のオッサン読者にはなかなか居心地の良い作品で、人情家揃いの「ザ・トレインズ」の面々も、本当に現実のドリフがこんないい人たちだったらエエなあ、と夢を見させてしまう。まあその辺は、ドキュメント風ドラマということで(笑)。 ちなみに本書の巻末には、著者のお断りとして、(明確に実名を出さずに)あの人たちをモデルにしてる、その業績に感謝と敬意を捧げる、しかし作中の情報や描写は、まんまリアルなものばかりではありません、という主旨のことが記載されている。まあ、当然だな。その一方でしれっとドリフやその周辺の芸能関係者、『全員集合』に関連した資料・文献の名がいくつも列記されているのがなんか笑える。 |