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ミステリの祭典

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開化鐵道探偵
元八丁堀同心・草壁賢吾

作家 山本巧次
出版日2017年05月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 ALFA
(2025/08/07 09:00登録)
職歴30有余年の元鉄道マン山本巧次による鉄道ミステリー第一作。

時は明治12年、鉄道の黎明期。ところは大津、逢坂山のトンネル工事現場。
すでに開通している大阪京都線をさらに延伸する重要地点で怪事件が頻発する。
鉄道局の高官から捜査を委嘱されたのはなんと元八丁堀の切れ者同心。考えてみれば維新から10年あまり、元同心はたくさん居ただろうから不思議はない。
助手にあてがわれたのは鉄道局技手見習。こちらも貧乏御家人の息子。
江戸者の探偵コンビに、長州閥の鉄道局、薩摩閥の警察、大阪の商社、掘削を担う生野銀山の鉱夫たちが入り乱れての本格ミステリー。
テンポのいい文体で物語が展開する。
個々のトリックもさることながら、黒幕を含めた事件の構図そのものに説得力がある。

終盤の真相開示は「さて、皆さん・・・」のポワロスタイル。
見事に犯人を挙げた元同心に、敬意と悔しさ混じりの敬礼をして犯人を引っ立てていく薩摩出の警部は、まさにホームズとレストレイド。
考証も確かで読みごたえのある鉄道ミステリーの快作。

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