home

ミステリの祭典

login
熱愛
私立探偵・鬼束啓一郎

作家 香納諒一
出版日2010年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2022/04/29 10:20登録)
香納諒一は『心に雹の降りしきる』を読んだ後、ハードボイルドとは言えないものが2作続きました。本作はというと、主人公の鬼束は一応刑事くずれの私立探偵ですし、やくざの世界がかなりリアルに描かれてはいるのです。しかし「ミスター」と呼ばれる謎めいた超一流の殺し屋が出て来るというのが、それはそれでおもしろいのですが、ハメット・タイプとは違うという気がします。このゴルゴ13みたいな殺し屋の素顔は、かなり早い段階で明かされます。ただ、最後にひとひねりしてはありますが。
自動車の中で組長の「馬鹿息子」の銃が暴発し、ミスターの秘密を聞き出そうとした相手が死んでしまうという、あほらしいとも言えるようなシーンから始まる話です。ところが鬼束がこの馬鹿息子と、さらに彼の引きこもり的な弟との絆を深めていくところが、なかなか感動的なラストにつながってきます。

1レコード表示中です 書評