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ミステリの祭典

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嘘ばっかり

作家 ジェフリー・アーチャー
出版日2018年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2018/12/31 13:06登録)
大長編「クリフトン年代記」完結の熱気も冷めやらぬうちに、早くも次作が発表!
今度はお得意の短篇集! 新潮文庫の帯には『人生いたるところに地雷あり』という刺激的な惹句!
でも、今回はいつもの数字に因んだタイトルじゃないのね・・・

①「最後の懺悔」=舞台は欧州が第一次世界大戦に向かう頃の英国。尊敬するドイツ人教師と英国人の生徒。ふたりがその後に出会う運命とは・・・。何たる偶然!
②「オーヴェル・シュル・オワーズの風景」=夢を持ち警官になった若者が初めて迎えた大事件。マフィアの自宅に麻薬を押収に行ったはよかったが、麻薬はどこにも見つからず・・・。嫌な雰囲気のなか若者が殊勲を上げる。
③「立派な教育を受けた育ちのいい人」=なんちゅうタイトルだ! 主役は閉鎖的な男女社会のなか、初めてその学校に採用された女性教師。四面楚歌の授業のなか、孤軍奮闘するが・・・
④「恋と戦は手段を選ばず」=なんちゅうタイトルだ! 金持ちで鼻持ちならない地主の男が清貧の美女を無理矢理恋人から強奪! ラストに当然その報いがやってきます。
⑤「駐車場管理人」=実に作者らしい一編。要は成功譚なのだが、賢い妻を持つと、男は幸せということか?(ただし、賢すぎても困るが・・・)
⑥「無駄になった一時間」=オチがちょっとよく分からなかったのだが・・・
⑦「回心の道」=第二次世界大戦下。ユダヤ人に対する非道な仕打ちの数々。「回心」とはそういうこと。
⑧「寝盗られた男」=これは・・・寝盗られた相手が嫌だな。女は怖い。
⑨「生涯の休日」=結末が3種類用意されているという趣向に富んだ一編。個人的には最後のやつがベスト。(当然こういう奴は因果応報だろ)
⑩「負けたら倍、勝てば帳消し」=当然ながらギャンブル(ルーレット)の話。こんなお人好しのカジノってあるんだろうか?
⑪「上級副支店長」=分かるよ。面白くないよねえ・・・。出世の道が閉ざされてしまうと、こういう思い&行動に走る人っていそうだな。
⑫「コイン・トス」=これも戦争のお話。ラストはややしんみり・・・
⑬「だれが町長を殺したか」=これがマイベストかな。イタリアにある架空の村が舞台。村人のほぼ全員が町長を殺したと名乗り出るという異常な事態! ちょっと寓話的な雰囲気。

以上13編にショート・ショートのような2編もあり。
とにかく芸達者な作者。今回もバラエティに富んだ小気味の良い短編が味わえる。
ただ、今までに比べると「毒」の度合いが少ないのがやや不満。ひねり具合も今ひとつという作品が多い。
その当たりはネタ切れなのか、やっつけ仕事なのか、どっちかかな?

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