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ミステリの祭典

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多羅尾伴内
七つの顔をもつ男

作家 小池一夫
出版日1986年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2018/12/17 10:33登録)
 「ある時は片目の運転手、またある時は謎のせむし男、・・・しかしてその実体は・・・正義と真実の使徒、藤村大造!」
 終戦直後から1960年までに大映・東映含め11作品が制作され、一世を風靡した活劇映画シリーズ「多羅尾伴内」。1978年に夢よもう一度と、ブーム再燃を狙って発表された二代目映画シリーズに、タイアップ連載された漫画版。原作/小池一夫×作画/石森章太郎の大物コンビで「少年マガジン」掲載。
 悪との戦いに人生を賭してきた多羅尾伴内こと藤村大造。だがその彼も老い疲れ、知人の旅行ツアー会社顧問としてアイデアを提供する傍ら、密かに後継者を捜し求めていた・・・。
 のっけからリアルと言うか、辛気臭いスタート。物語は彼が、拳銃射撃ツアーで遂に意中の若者・紙袋順平を見出した所から始まります。とは言え、勝手に見込まれた順平にしてみれば迷惑もいいところ。押し問答の果てに、策を弄して半ばムリヤリに二代目誕生。昭和一ケタの遣り口ですな。
 このプロローグ「愛ゆえに・・・」を皮切りに事件構成は全六話。むくれていた順平も、第二話「失神党異聞」で犯人の毒牙に掛かった瀕死の被害者を、腕を焼かせて止血する大造の姿に感銘を受け、やがて本格的に跡を継ぎ二代目伴内として戦います。
 流石に大家同士だけあって単なる宣伝作品には終わらない独自の展開。第三話「さよならの贈り物」までは二人のバディ物で、第四話「硝子の手錠(ワッパ)」から最終話「エンピツ殺人事件」までは順平単独物。思い切った事をしたものですが、比佐芳武氏や東映には了解取ったんでしょうかね。
 ピカイチはその「さよならの贈り物」。44オートマグを使う人間凶器に二人の伴内が挑むアクション編。推理要素も結構あります。次いで動物不在のサーカス団が舞台の連続殺人、第二話「失神党異聞」。あとはKC版最終回の第五話「愛のピーク」かな。受験戦争を背景に学習塾で起こる第六話「エンピツ殺人事件」は、KC版には収録されていません。
 ショッキングな展開の「さよならの贈り物」を含めて6点。これ抜きだと5点。漫画作品とは言え、そこそこ力の入ったシリーズです。

 追記:肝心の東映映画伴内は第二作「鬼面村の惨劇」で見事にコケました。レビューには「横溝映画にゲロを吐いたような」という無情な評価が。全身白塗りの土方巽暗黒舞踏が踊りまくるオープニングと予告編が記憶に残っています。合掌。

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