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ミステリの祭典

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老いの入舞い

作家 松井今朝子
出版日2014年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/12/04 09:56登録)
新米同心の間宮仁八郎と、大奥出身の尼僧、志乃のコンビが難事件に挑む捕物帳。
結婚間近の娘が消え、300両を要求する手紙が届く「巳待ちの春」は、何気ない一文が解決のヒントになる伏線が鮮やか。火事で死んだ隠居の娘が、原因は付け火と訴え出る「怪火の始末」と水茶屋の看板娘が殺され、容疑者として大店の息子が浮上する「母親気質」は、犯人が誰かよりも、事件で傷ついた人たちをどのようにフォローするのかを主眼としているので、推理と人情のバランスが絶妙である。
そして最終話となる表題作では、武家の奥向きで働く女の死体が発見された事件と、赤坂で起きた心中が、意外なかたちでリンクしていく。
事件の背後には、付きまといや不倫、母と息子の複雑な関係など、普遍的な男女の問題が置かれている。謎が解かれるにつれ、明確な解答が無いテーマが浮かび上がるので余韻も残る。

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