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ミステリの祭典

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怪盗ニック全仕事(5)
怪盗ニック

作家 エドワード・D・ホック
出版日2018年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2018/11/28 03:44登録)
(ネタバレなし)
 本シリーズは1、2巻は既読も多いので後回しにして、第3巻から読んでる。
 以下は本書第5巻に収録の全14話、その各編について簡単に寸評&メモ書き。

「クリスマス・ストッキングを盗め」
……伏線の張り方と意外な真相の向こうのキャラクタードラマとあわせて、まとまりの良い一編。本シリーズのスタンダード編的な面白さを感じる。
「マネキン人形のウィッグを盗め」
……話の広がり方は印象的だが、依頼人がニックに盗みを願い出た理由は少し強引な気が。
「ビンゴ・カードを盗め」
……図版入りの一編。依頼人の盗みの動機は(ホックの創意的に)安易だが、ビンゴゲームについての知識(トリヴィア)の面では、お勉強になる話。
「レオポルド警部のバッジを盗め」
……クロスオーバーのイベント(ファンサービス)編。巻末で訳者が語るとおり全46ページと本書の中でも長めの一本だが、趣向の楽しさもあって、あっという間に読了する。
「幸運の葉巻を盗め」
……これも盗みの動機はちょっと……だが、謎解き作品としてのごくさりげない手がかりは、良い意味でホックらしい。ゲストヒロインのエンバーがなかなか魅力的。最終巻に収録されるエピソードで再登場しないかと期待。
「吠える牧羊犬を盗め」
……盗みの動機は、とても納得できるもの。しかしそれだけに、先が読めてしまうのが難。ただしソレだけでは終らないよう、もうひとつサプライズを用意しているのはさすが。
「サンタの付けひげを盗め」
……ゲストキャラの関わり合いが印象的な一編。本書のなかでも良く出来ている一本だろう。
「禿げた男の櫛を盗め」
……ローカル色満開の一編。濃いめの人間関係のなかでのミステリ&キャラクタードラマが読む側に腹応えを感じさせる。
「消印を押した切手を盗め」
……序盤からニック以上に主役っぽいゲストキャラが、出てくる話。シリーズのなかでちょっと変化球っぽいことをしてみたかったホックの気分がうかがえる。ダイイングメッセージの真相は、う~む。なんというか。
「二十九分の時間を盗め」
……以前のゲストキャラ再登場編。派手な活劇要素と謎解きの興味の組み合わせはなかなかだが、(中略)の細工は、初めて手にする種類のものもあるんだし、いくらなんでも、その数をその時間内ではムリでしょ。
「蛇使いの籠を盗め」
……序盤がサンドラの視点で始まり、彼女のピンチにニックが助っ人に来る回。いろいろとぶっとんだ話で、良くも悪くも記憶に残る。
「細工された選挙ポスターを盗め」
……盗みを依頼する事情の向こうに事件の謎解きが潜む正統派の一編。ただこれも、高いお金を払ってニックに盗ませなくても……と、疑問が浮かぶ種類の一編でもある。
「錆びた金属栞を盗め」
……全体的にシンプルな話。これこそ、ニックの盗みがそもそも必要だったのか? と思える点では、本書の中でも随一かもしれない。
「偽の怪盗ニックを盗め」
……真犯人は登場人物の少なさもあって見え見えだが、最後に明かされる意外な動機にはちょっとオドロキ。伏線の張り方は、ああ、ホックらしいな、という感慨でいっぱい。
 
 今回は平均すれば安定した一冊で、その中にいくつかチェンジアップの変化球が混じった感じ。本シリーズは次回で完結だそうだが、まだまだ創元でのホックのシリーズ短編集企画はきっと続くであろう。(というか、是非やってほしい。)
 本命はレオポルドもの。対抗でランドだよね。

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