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ミステリの祭典

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真犯人
静岡県警・日下悟警部補

作家 翔田寛
出版日2015年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2018/11/24 22:08登録)
平成二十七年八月、東名高速道路の裾野バス停付近で、男性の他殺死体が発見された。裾野警察署の日下悟警部補は、被害者・須藤勲の長男・尾畑守が昭和四十九年に誘拐されていたことを知る。犯人は身代金受け渡し現場に現れず、守は遺体となり東京都大田区の多摩川で発見された。未解決となったこの事件については、時効直前の昭和六十三年に再捜査が行われていた。日下は、再捜査の陣頭指揮を執った重藤成一郎元警視に協力を願い出る。四十一年の時を超え、静岡県警の矜持を賭けた三度目の誘拐捜査が始まった。誘拐小説の新たな金字塔、連続ドラマ化と共に文庫化!
『BOOK』データベースより。

大変生真面目に書かれた本格警察小説ですね。しかし、それが仇になって面白味という点では物足りなさを感じました。もう少し外連味や遊び心があるともっと素晴らしいミステリになったと思います。

現在進行形の殺人事件よりも、41年前の誘拐事件がメインとなっており、実に緻密で地道な捜査の様子が具に描かれていますが、誘拐物にありがちなサスペンス性は感じられません。事件の実況よりも、時効一年前にたった六人で編成された特別捜査班の活躍にページを割かれて、刑事一人ひとりの想いや僅かな齟齬をも見逃さない観察眼に焦点が当てられています。
ただ、真相がそれに見合ったものとなっておらず、個人的には残念に思います。それと、せっかく特捜班をクローズアップしているのに、辰川以外個性が乏しいのもやや寂しいですね。
終盤ストーリーが加速し一気に真相に向かう辺りはなかなかの描写力だと思います、そこを加点しての6点です。

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