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ミステリの祭典

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ミステリマガジン2018年7月号
特集:おしりたんてい&バーフバリ 奇跡のミステリ体験!

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日2018年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 おっさん
(2018/11/21 19:29登録)
本当言って、ピエール・ヴェリの「緑の部屋の謎」を取り上げたいだけなんですけどw
本サイトの作品登録ルール(「はじめに」のページ参照)の 1. に

 雑誌掲載のみで単行本化されていないもの
 長編は書誌情報を注記のうえ登録可。Amazonとリンクしないので、書評の中にあらすじ紹介があるのが望ましい。 短編は、もともと単品での登録を認めていないため、どうしても書評したい場合は雑誌名を登録しその中で書評する。

とありますので、このカタチをとる次第です。
そういえば、過去に筆者、アガサ・クリスティーの戯曲「ナイル河上の殺人」(『宝石』昭和30年6月増刊号)と「ホロー荘の殺人(戯曲版)」(『ミステリマガジン』2010年4月号)も、同様に登録していました。そのときはまだ、「長編は書誌情報を注記のうえ登録可」という条件が出来ていなかったからなあ(遠い目)。
おっと閑話休題。

「ガストン・ルルーを偲び、心から敬愛をこめて」という献辞のある、短編「緑の部屋の謎」(竹若理衣訳)は、原題をLe mystère de la chambre verte といって、1936年に発表された、ピエール・ヴェリによる、『黄色い部屋の謎』(早川書房版の訳題だと『黄色い部屋の秘密』なんですが……)のオマージュ作品です。
屋敷に忍び込んだ泥棒は、こまごました物を盗んだだけで、高価な宝石のしまわれていた寝室はスルーして立ち去った。緑色の壁紙の張られたその部屋は、鍵がかかっていなかったにもかかわらず、なぜ泥棒は中に入りもしなかったのか? マルタン刑事と、保険会社の委託を受けた私立探偵フェルミエのまえに浮かんでくる、密室ならぬ“開かれた部屋”の謎。でもそれって、「そんな、悩むようなことか?」。はてさて真相は―― というお話。
お断りしておきますが、本格ミステリではありません。ユーモア・ミステリ、というか、コントといったほうがピッタリきます。だから、しかつめらしくアンフェアだといって目くじらをたてるのは、大人気ないww
密室ものの古典『黄色い部屋の謎』のオマージュを、密室でない話に仕立てあげ、あべこべの展開で読者の笑いを誘い、うん、その趣向ならこのオチだよね、と納得させてしまう、ヴェリの機知と稚気は、まこと、あらまほしい。

この『ミステリマガジン』2018年7月号には、ほかにも、恋人同士が熱い抱擁の結果、融合してしまった(!)ことから巻き起こる騒動記、マルセル・エイメの「ひと組の男女」(手塚みき訳)と、邪魔な年寄りを排除する算段を、明るく(!)物語る奮闘記、トーマ・ナルスジャックの「爺さんと孫夫婦」(川口明日美訳)が載っていて、前記のヴェリ作品と合わせて、さながらフランス・ミステリ小特集なのですが(3編中のベストは、最後の「爺さんと孫夫婦」かな。シャルル・エクスブライヤのパスティーシュとされていますが、まったくエクスブライヤを読んでいない筆者が問題なく楽しめ、皮肉な結末まで持っていかれて……エクスブライヤが読んでみたくなりましたから)、困った点がひとつ。

本号の、正式な特集は「おしりたんてい&バーフバリ 奇跡のミステリ体験!」ということで、まったく関係のない児童書と映画が抱き合わせで大々的に紹介されています。
それはまあいい。広義のミステリとして、それぞれ、さぞ素晴らしい作品なのでしょう。どちらも未見の筆者には、何を言う資格もありません。
しかし。
本来なら、翻訳ミステリ誌の柱であるべき、上記のような翻訳作品を、「おしりたんてい」特集に組み込んでいいわけがありません。ユーモアつながり? ごめんなさい、そのセンス、笑えない。どころか、むしろ腹立たしい。
採点の7点は、ヴェリほか、不遇のフランス・ミステリの出来を買ってのもので、特集記事へのものではないことを明記しておきます。
早川書房は、罪滅ぼしに、来るべき将来『新フランス・ミステリ傑作選』を企画して、作品を再録すること! 頼むよ、本当に。

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