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ミステリの祭典

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佐渡流人行
松本清張 傑作短編集〔四〕

作家 松本清張
出版日1965年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 斎藤警部
(2018/11/19 22:32登録)
腹中の敵/秀頼走路/戦国謀略/ひとりの武将/いびき/陰謀将軍/佐渡流人行/甲府在番/流人騒ぎ/左の腕/怖妻の棺  (新潮文庫)

表題作は圧巻の時代ミステリ。結末が見えてるとか伏線がそのまんまとか言うのは野暮。サスペンス強度を最大に上げる為わざとそうやってんだから。これだけ理不尽な時代イヤミスでありながら、逞しい救いの突風を吹かせる終結には最高の余韻が。 単純な主題に収斂させない物語の重層性と言い、やはり本作こそ白眉。

どことなく連城っぽい題名からは想像つかない最後のドタバタ劇「怖妻の棺」は視界の霞む高速展開と言い濃密な人情風景と言いなんだか凄い。エンディングは最高に爽やか。たまにはタバコが吸いたくなる一品だ。

ダークサスペンスからぎりぎりハッピーエンド(??)の「甲府在番」や怖滑稽バイオレンス「いびき」、歴史サスペンスのこれぞ魅力満載「陰謀将軍」に痛快人情アクション「左の腕」、どれもこれも壮年清張の筆冴え渡り盤石のラインナップ。 「腹中の敵」「戦国謀略」なんかはちょっと、氏にしては当たり前すぎる感もあるが。。突き上げる心理の意外性でサスペンスをより加速させて欲しかったが。。やはりスリルは有りつまらない代物ではありませんからこのあたりもまあ満足。

戦国末期武将、江戸泰平の役人、罪人に無宿人、流刑者、そして市井の者たち。 色んな意味で”流された”人間の話が目立つ。 そこに微妙な統一感が醸し出されている一冊と言えるか。

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