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ミステリの祭典

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リンカーンとさまよえる霊魂たち

作家 ジョージ・ソーンダーズ
出版日2018年07月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/11/07 14:26登録)
待ち望んだ”初夜”当日に命を落としたハンス・ヴォルマン。ゲイの恋人にふられて自殺したロジャー・ベヴィンズ3世。2人がいるのは、この世に執着を抱く死者たちがとどまっている、あの世との中間地帯だ。そこに、リンカーン大統領の幼い息子ウィリーの遺体が運ばれてきて・・・。そんなシチュエーションから物語の幕を開ける。
深夜、遺体が安置されている納骨所を訪れ、愛息の亡骸を抱きしめるリンカーン。その感動的な出来事を目の当たりにしてざわつく大勢の死者たち。ヴォルマンとベヴィンズもまた衝撃を受け、父子の関係に介入しようと試みる。
ポリフォニック(多声的)に響き渡る、死者たちの声。虚実取り混ぜた文献の抜粋を挿入しながら、人間リンカーンに迫っていく構成。そうした文献や黒人の死者の声を通して提示される、南北戦争という内戦がアメリカにもたらした功罪。
死者の物語なのに笑ってしまう箇所が多く、ラスト間際では、ウィリーを彼岸に旅立たせるために奔走する、霊魂たちの奮闘に胸が熱くなること必定だ。死者一人一人の面影が心に残る、異色にして出色のゴーストストーリーなのである。

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