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ミステリの祭典

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裸の顔
改題『顔』

作家 シドニー・シェルダン
出版日1984年04月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 クリスティ再読
(2024/12/03 11:09登録)
シドニイ・シェルダンって大昔はハヤカワで出てたんだよね。アカデミー出版で「超訳」をウリに新聞広告打ちまくって....でセルアウトしたわけだけども。
うんまあ何かご縁があったみたいで、本書を読むスケジュールに入れていた。昔読んだのかなあ、よく覚えていない。今回はポケミスを主に「超訳」とも比較。

精神分析医が何度も何度も命をつけ狙われ、間一髪で助かるか誤殺された死体が転がるか、の連続の話。実に達者な筆。イベントが連続するのを、スピーディに場面を転換しつつ、視点もこだわらずに切り替えて叙述。キャラもいろいろと味付けしていて、単調にならないように工夫。開始すぐに殺される主人公の受付嬢も、スラムの少女売春婦から主人公が善意で拾い上げた黒人女性とか、話としては実に面白いけども、プロットの本筋とはまったく無関係。

で、肝心の本筋は単純。振り返れば一方調子のスリラー。叙述は上手でソツががなさすぎる。それだけならば「合わないなあ...」と評価を下げることはしないけど、主人公の設定から「フロイト精神分析」というものが、いかにロクでもないものなのかよく分かる。とくに専門知識を生かしたうまい逆転とかはない。
評者は昔から「エセ科学」とフロイト主義には悪感情を持っているんだ。
まあだから、紙芝居的な底の浅さみたいなものが覗いてしまい、悪達者な筆とのコンビネーションにシラケた。すまぬ。

で「超訳」の話。日本人に伝わりにくいアメリカ文化のネタをカットしたり、トークにキャラらしい役割語を振ったりとか、そういうレベル。なら平井呈一とか都筑道夫だって充分「超訳」だよ。そもそもリーダビリティ絶大なシェルダンだから、そんなことしなくても敷居が低いと思う。「超訳」というネーミングが最大の「発明」だったようにも思う。

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