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ミステリの祭典

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明治波濤歌
明治もの

作家 山田風太郎
出版日1981年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2018/09/30 09:26登録)
 「波濤〈なみ〉は運び来たり 波濤〈なみ〉は運び去る 明治の歌・・・。」
 激動の明治期、「港」を基点に日本を訪れたり、逆に旅立っていった人たちの物語。中短編取り混ぜて全6篇収録。知名度は低いですが、山田風太郎の明治ものの中では質量共に圧倒的な『警視庁草紙』に次ぐ位置にある作品だと思います(世評の高い『明治断頭台』は、実在の人物や歴史事実とのクロスオーバーが少ないのであまり好みではない)。
 集中でミステリ味の強いのは明治ものレギュラー格の川路利良登場の「巴里に雪の降るごとく」と、日本にやって来た森鴎外の恋人エリスが三度に渡って探偵役を務める「築地西洋軒」。中でも「巴里・・・」は川路の他にもヴェルレーヌやポール・ゴーギャン、マイナーですが成島柳北らに加え、〆としてヴィクトル・ユゴーを決闘の見届け人に指名するという贅沢さ。
 挿話としてマリー・セレスト号事件や、有名な川路のうんこエピソードも(パリ行きの列車内で催し、トイレがある事を知らずそのまま新聞に包んで車外に投げ捨てたが、日本語の新聞だった為後でバレた。アッチの保線夫の方に命中したそうです)。風太郎自選ベスト短編の一つ。
 これに次ぐのは自由民権運動を背景に、北村透谷や南方熊楠を絡ませた哀切なる群像劇「風の中の蝶」。これには女性剣士が登場。タイトルは透谷の詩の一節と、最後に自由党員たちを逃がすため散ってゆく彼女の姿とを重ねています。アメリカに逃亡したまま生涯を終える、透谷の義弟石坂公歴の望郷の歌で終わるラストの切なさは編中随一。
 あとは樋口一葉が意外な銭ゲバぶりを見せる「からゆき草紙」がちょっとミステリ入ってるかな。でもこの作品の一葉といい「横浜オッペケペ」の野口英世といい、明治期はこのくらいのバイタリティが無ければ後世に名を残せなかったのかもしれませんね。

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