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ミステリの祭典

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どぜう屋助七

作家 河治和香
出版日2013年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/09/27 09:45登録)
幕末の駒形どぜうを舞台に、江戸っ子の心意気を描いている。作中においしそうな料理が満載で、それも読みどころになっている。
剣は桃井道場で目録を授かった腕前、趣味は粋な新内流しだが、店は妹のヒナにまかせっきりの元七(三代目助七)を狂言回しにして、物語は進んでいく。
元七の周囲では、火薬の爆発で家をなくした農家の娘の伊代が、駒形どぜうで慣れない仕事を始めたり、自殺した女性従業員の幽霊が店に現れたりと次々と事件が起こるので、市井もののあらゆる要素が楽しめるだろう。黒船来航、安政大地震、コレラの大流行などが相次ぐ激動の時代を、元七たちが持ち前の明るさで乗り切る展開も痛快だ。特に、大地震で店を失いながら被災者のために立ち上がる元七の活躍は、東日本大震災の支援の輪を思わせるものあがあり、日本人の人情がいつの時代も変わらないことがよく分かり胸が熱くなる。
開いたドジョウを卵でとじる柳川鍋が流行すると、元七も興味を持つが、店の伝統を理由に先代が反対する。この矛盾を克服し元七が新メニューを考案する場面は、伝統と革新はどんな関係にあるべきかを問いかけているので考えさせられる。

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