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ミステリの祭典

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ポンペイの四日間

作家 ロバート・ハリス
出版日2005年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 tider-tiger
(2018/09/23 19:04登録)
2003年イギリス作品
紀元前79年ごろ、日本は実在したのかどうかすらはっきりしない崇神天皇の時代。この頃、ローマ帝国にはすでに各都市に水道が敷かれていた。この水道の管理官が謎の失踪を遂げてしまい、後任としてマルクス・アッティリウス・プリムスが任命される。ところが、資本論や電気自動車とは無関係なアッティリウス氏は就任して早々にあちこちの都市が断水するという不運に見舞われる。修復のために責任病巣と思しきポンペイを訪れるが、かの地では権力者による悪事が横行、そして、水道管には理解し難い異常が発生していた。

ポンペイで起きた有名なあの災害の前後四日間の出来事を水道官の目を通して冒険小説風に仕立てた作品。
水道官というと水道局の局長みたいなものなのか? どうにも仕事内容がイメージしづらいこのお役人を主人公にしたのはやや奇抜ではあるが、妙手だった。当時としては天変地異などに最も気付きやすい職業だったと思えるし、主人公の職業として真新しくもある。
また、実在した学者にして艦隊司令のプリニウスがキレキレだったのも個人的にはツボ。
地味な展開ながらローマ時代の日常生活などが興味深く描かれ、アッティリウスと作業員たちとの確執、当時の奴隷に対する酷い仕打ち、昔の奴隷はもっと酷い扱いだったとグチる元奴隷の金持ち(俺らの頃は先輩の前で髪の毛いじったりしたらビンタされてウンヌンみたいな話)、今と変わらぬ贈収賄などなどくすぐられるエピソードも次々に繰り出されて意外とリーダビリティは高い。
前任の水道官がなぜ失踪したのか。この謎を軸に読者がすでに知っている未来に向けて物語は突き進むが、まあこのへんの謎はさほど突っ込んだものではなかった。もっともそれどころじゃないイベントが発生してしまうわけだが。
個人的な感想としては前半はよかったんだけど、終盤になるにつれて作品が悪い意味でエンタメ化していくのがちょっと残念だった。

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