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ミステリの祭典

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春風コンビお手柄帳

作家 小沼丹
出版日2018年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2018/09/17 12:06登録)
(ネタバレなし)
 チェスタートン風の味わいと言われる、女性教師が主人公探偵の連作ミステリ短編集『黒いハンカチ』。そういう隠れた(一時期はそうだった)名作があるらしいことは、80年代の「本の雑誌」あたりで初めて知ったと思う。ただしその時点では1958年刊行の初版は稀覯本だったし、93年に同作が創元推理文庫に入った際には読む機を逸し、ついに今日までそのまま過ごしてしまった(そのうち読みます~汗~)。
 そんな訳で、今回、手に取った今年の新刊(今まで未書籍化だった小沼の作品を集成したシリーズの一冊)が評者の初めての小沼作品となった。
 本書は「高校時代」「ジュニアそれいゆ」「女学生の友」など昭和のティーン誌に掲載された複数の作品をまとめたものだが、連作の二シリーズ「モヤシ君殊勲ノオト」「春風コンビお手柄帳」が特に普通のジュニアミステリっぽい。後者は似鳥センセの今年の新刊『名探偵誕生』に似た雰囲気もあるね。
 ことさら強調的に語るミステリ的なギミックはそう多くないが、わかりやすい例でいえば仁木悦子の諸作をさらに若者に向けた視線で語ったような居心地の良さは楽しめる(シニカルな味付けもちょっとある)。
 そのあとに収録された、独立した短編4作もそれぞれの持ち味。なかには普通の青春小説的な作品もあるが、謎の美少女に傾いていく心の推移を語る「窓の少女」など、手法としてはミステリっぽい感じの仕立てもあり、このサイトに来るようなミステリファンにも楽しめるだろう。
 ただまあ、自分でもあらかじめ自覚的だったのだが、本書をしっかり楽しむには先にそれなりに他の小沼作品に通じてからの方が良かったような気もする。単品で本書だけ読むと、何かを見落としてしまいそうな、そんな警戒感を抱かせるところもある。
 評点は小沼作品の素人のつけた、一つの例ということで、こんな感じ。

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