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ミステリの祭典

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十三の物語

作家 スティーヴン・ミルハウザー
出版日2018年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/09/17 09:13登録)
アニメ「トムとジェリー」を、思索的な写実小説に仕立て直した「猫と鼠」。この、追う者追われる者の愛憎こもごもの関係を緻密なタッチで描いた1編から幕を開ける短編集。
ミルハウザーの愛読者ならご存知のとおり、儚い存在への愛着、異端の天才の狂おしい情熱、過剰な想像力が生み出す奇想が、この作家の十八番。本書はその粋が堪能できる一冊になっている。
密室状態の自宅から忽然と姿を消した女性の一件から、”黙殺”という暴力へと思いを至らせる「イレーン・コールマンの失踪」。闇の中から出てこない少女と、彼女によって昏い夢をかき立てられる少年の物語「屋根裏部屋」。不可視のミニチュアを完成させる細密細工師の話「ハラド四世の治世に」。<天の床を貫いた>塔の来歴と、今度は地下へと向かうことになる人類の飽くなき欲望を描いた「塔」。女性のファッションの究極の変遷をつづった「流行の変化」。動く絵を発明した不遇の天才の生涯「映画の先駆者」。
など、「オープニング漫画」「消滅芸」「ありえない建築」「異端の歴史」と、四つのパートに分けて収録されている13編は、「マーティン・ドレスラーの夢」「ある夢想者の肖像」といった長編群と共通するテーマを備え、それらの長さにひけを取らない読みごたえを備えている。ミルハウザー入門書としても熱烈推薦できる短編集だ。

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