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ミステリの祭典

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ミステリマガジン1973年9月号
特集:シムノン引退記念 MWA賞受賞作特集

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日1992年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2018/09/16 11:28登録)
 シムノンの単行本未収録短編「メグレと消えたミニアチュア」がお目当てで入手した号。引退記念と銘打つだけあって、写真や画像など30P余りの実質シムノン特集。
ピカイチは北村良三(長島良三)氏の寄稿「シムノンのこと」。
 「ミニアチュア」は〈日常の謎〉に近い小品。原題は LE NOTAIRE DE CHATEAUNEUF(シャトーヌフの公証人)。田舎でくつろぐメグレは、突然訪れたモット氏と名乗る人物に盗まれた象牙細工の捜査を承知させられ、別荘から連れ出される。気乗り薄のメグレだったが、モット邸で彼の三人の娘に紹介されるに及び、幸福に満ちたこの家庭にとって、盗難はオルフェーブル河岸で扱うどんな犯罪よりも大問題なのだと理解する。
 三姉妹の次女アルマンドは婚約中だったが、彼女の婚約者ジェラールはルグロ氏と名乗るメグレを見て驚愕した。ジェラールの父親コモドールは、「オランダの盗賊」と呼ばれる名高い窃盗犯だったのだ。彼はアルマンドと婚約する際、モット氏に全てを告白し了承を得ていたが、その矢先に起こった盗難事件に父親であるモットの苦悩は深まるのだった・・・。
 1938年発表の36番目のメグレ物。傑作とかではないけども、次第に愛着の湧くタイプの作品でした。他の未収録はヒュー・ペンティコーストの「ジェリコと死の手がかり」と、クラーク・アシュトン・スミスの「魔神ツアソググアの神殿」。中ではペンティコーストの短編が拾い物だったなあ。
 深夜の山道で目的地に向け車を走らせる主人公が、犬の死体を抱えた少女に出会って・・・という話。邦題とはあんま内容が合ってないけど、後味の良い佳作です。
 単行本収録作は「メグレ夫人の恋人」収録の「メグレとおびえるお針娘」。および「エドガー賞全集 下」収録の2作品。その中の「月下の庭師」は1971年に「アーゴシー」に発表された、恐怖小説寄りの結末が冴える傑作。
 後は「夫と妻に捧げる犯罪」からスレッサーのショートショートが3本。寄稿は小鷹信光さんの「新パパイラスの舟」と、ジョン・ディクスン・カーの「ニューゲート紳士録」がGOOD。通常号としては非常に充実した内容で、たいへん美味しゅうございました。

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