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ミステリの祭典

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夢なきものの掟
紅真吾

作家 生島治郎
出版日1976年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2018/09/20 12:50登録)
 国民党と共産党との対立が激化する魔都上海。浙江路のはずれにあるバー『レディ・キラー』に無精髭をはやし、よれよれの中国服を着た男がふらりと現れた。彼の名は紅真吾。揚子江を遡る苦難の冒険が失敗に終わったのち、5年余りの間相棒・葉村宗明と共に中国人街に身をひそめていたのだ。
 だがその葉村は半年ほど前にぷいと姿を消していた。しかも彼には阿片中毒の気配があった。つてを辿って探索を続けていた真吾だったが、万策尽きて旧知のポール・グリーンの元を訪れたのだった。
 真吾はグリーン配下の阿片吸煙所のマネージャー、黄老人に引き合わされ、そこで葉村の手掛かりを得る。だが彼にそれを齎した女は、既に拷問を受け殺されていた。そしてその喉笛には、葉村のものとおぼしき象牙の柄のナイフが突き刺さっていた・・・。
 名作「黄土の奔流」の続編でシリーズ2作目。昭和51年発表。再読です。初読の際に「すっげえ駄作」と感じたんですが、改めて読み返すとそこまで酷くもないかなと。雰囲気はけっこう出ていて、リーダビリティもまずまず。ただキャラ頼りなのは否めませんね。そして抗日関係の描写が前作より遥かに説教臭い。この主人公でなかったら4点付けてほかしてます。
 殺人事件の犯人も分かり易いサディストが出てきて、こいつだろと思ってたらその通りだし、後半がやっつけ加減なのも弁護出来ません。最終的には中国全土に根を張る大組織、青幇〈チンバン〉と対決するんですが、中盤に物々しく登場した三大幹部は一山百円の扱いで最後にアッサリ始末されます。蒼天の拳の紅華会幹部なみ。紅と葉村がタッグを組むと強すぎるんですよね。もうちょっと殺陣とか趣向を何とか。
  この後紅真吾シリーズは蒋介石が絡む「総統奪取(平成2年)」、最終作の「上海カサブランカ(平成13年)」と続きます。ほぼ10年に1作のペース。主人公の無敵っぷりが加速するそうです。ヒギンズの「鷲は飛び立った」とかと同じで、続けない方が良かったですね。一作目で綺麗に〆てあるのに色々勿体無いです。
 点数は5点。5点ですが、4点に限りなく近いと思ってください。

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