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ミステリの祭典

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無頼船長の密謀船
トラップ船長シリーズ

作家 ブライアン・キャリスン
出版日1988年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2018/09/17 15:03登録)
 第二次大戦から約30年後、相も変わらず七つの海の裏街道を渡り歩く無頼船長こと元英国海軍中佐エドワード・トラップ。彼は船客の密入国者たちに紛れ込んでいた謎のアラブ人集団に拉致され、ザラフィックと名乗る男に保険金詐欺の片棒担ぎを依頼される。独立国ガーマン沿岸の会合地点で積荷の荷降ろしをした後、書類上荷物を満載した事になっている空船を沈没させて欲しいというのだ。
 ザラフィックの態度に不信感を抱きながらも、目的地を自分の得意先に上書きし、そのままトンズラを決め込もうと画策するトラップ。急遽駆集められた乗組員の中には、エジプトで警官二人を射殺する羽目になった元副長ミラーがいた。トラップとの腐れ縁に悪態を吐くミラー。だが彼は密かに英国海軍の密命を帯びていたのだった。
 さらに彼らは纏めてミスター・チャン率いる中国マフィアに誘拐され、計画の妨害を約束させられる。またもや上書きされる目的地。提供された貨物船カマラン号は、ザラフィックとチャン配下の武装集団が睨み合う修羅場と化す。
 いったい船にはどんな秘密があるのか?
 1979年発表のトラップ船長もの2作目。乗組員も相変わらずポンコツで、14年間エジプトの機関車の釜焚きしてた奴とかが乗ってます。だけどどうもギャグのキレとか悪いですね。筋の複雑さに呑まれた感じ。
 なんでこうなのか考えてみたんですが、まずプロット。やられ役の中国マフィアは置いといて、謀略サイド担当のザラフィックと英国側が、凄そうに見せて実は行き当たりばったりなこと。実質トラップが三人いる状態。ある意味リアルですが、こういうのは読んでて面白くないです。
 石油価格に翻弄されて、命令も朝令暮改。実社会並みにグダグダな娯楽作品なんか見たくねえなと。筋が複雑なのはともかく、物語の軸がブレるとね。悪役はちゃんとキレてないと。作者も反省したのか、次作ではスタンダードな陰謀路線に回帰してます。
 そういう訳で、娯楽作品としては他の2作よりは下かな。泥臭い描写は健在ですが、今回はちょっと色々悪ノリし過ぎ。

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