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ミステリの祭典

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プラネタリウムの外側
南雲薫&佐伯衣理奈

作家 早瀬耕
出版日2018年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/08/28 09:47登録)
人は努力次第で人生を変えることができる。しかしそれでも実際に生きられるのは、たった一つの人生だけだ。
収められた五つの短編は、いずれも「有機素子コンピュータ」を用いた「別の可能性」を描いた作品だ。論理性と叙情性が見事に融合した、独特の世界が展開する。
表題作は、親しい人の死がもたらす喪失感を緩和するために開発された会話プログラムを巡る物語だ。親友を失った研究者南雲は、このプログラムを使ってインターネット上に彼の人格を再現し、話し相手にしていた。「彼」は自分の死を知らされないまま生き続け、南雲にとっても、自分が作った仮想現実であることを忘れるほど、日常的な存在になっている。
ある時、女子学生の依頼で亡くなった恋人を再現してやるが、何度試しても、恋人はほどなく「消失」してしまう。彼女が癒しを得るどころか、恋人の喪失という苦情を繰り返し体験していると知った南雲は、使用をやめさせようとするが・・・。
プログラム内に再現された人格はシュミレーションにすぎず、どんなに心を通わせても、死者がよみがえるわけではない。それでも読了後、喪失感とともに淡い温かさに包まれる。

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