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ミステリの祭典

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オペラ座館殺人事件
金田一少年の事件簿

作家 さとうふみや
出版日2004年08月
平均点3.00点
書評数1人

No.1 3点 おっさん
(2018/08/25 16:42登録)
原作 天樹征丸/金成陽三郎
作画 さとうふみや

――というわけで、はい、漫画です。
1992年に、『週刊少年マガジン』誌上に6回に渡り連載された、『金田一少年の事件簿』シリーズの記念すべき第一作ですね。当初、講談社コミックスの1~2巻にまたがって収録されていて、リアルタイム世代の筆者にはそのヴァージョンの印象が強いのですが、のちのベストセレクションや漫画文庫版では1冊にまとめなおされているので、作品単位の鑑賞という意味では(そして本サイトへの登録という意味でも)そちらがベターでしょう。今回、筆者はコンビニ・コミックの〈講談社プラチナコミックス〉版で読み返しました。

じつはこれ、以前、ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』をレヴューしたさい、関連作品として真っ先に脳裏をよぎり、もしこのサイトでマンガも登録できるのであれば、やっておくのになあ、と思ったタイトルでして……
サイトのルール改正にともない、それが実現可能になったので、じゃあ他の人がケチョンパンにやっつける前に、少しでも擁護しておこうかとw

主人公は――紹介が必要ですかね? 高校2年生で、かの名探偵の孫なる設定の、金田一一(きんだいち・はじめ。以下ハジメと表記)。そのハジメが、幼馴染の七瀬美雪の頼みで、演劇部の合宿の手助けをするため、部員たちとともに訪れたのが、孤島のホテル「オペラ座館」。台風で外界と隔絶した島で引き起こされるのは、ガストン・ルルーの小説をもとにした、ミュージカル「オペラ座の怪人」に見立てた連続殺人。
事件前夜、ホテルにチェックインし、不気味なメッセージを残し姿をくらました謎の男「歌月」が、重要容疑者と見なされるが……

漫画で「新本格」をやろうとしたけど、旧本格になってしまったでござるの巻、といったところでしょうかww
見立て殺人の心情的な必然性はいちおう認めるとしても――舞台となるホテルの構造を事前に把握して(加えて予行演習して)おかなければ無利な犯行計画という時点で、プロットが破綻しています。個々のトリックがどうこういう以前の問題。
しかし。
そんな批判は、ある程度ミステリに慣れ親しんだ人間のもの。
この第一作では、作者サイドは本格ミステリ・ファンの目など意識していません。むしろ、小説の本格ミステリなど読んだこともない層の読者を対象に、その面白さを伝えようとしているわけで、それを考えれば……
ヤングアダルト向け本格ミステリ漫画の「試作品」としては、プロットの弱さを演出でカバーし、大健闘したという評価もできなくはありません。
連載作品として、6回分のパートがあるわけですが、各パートの“引き”はどれも工夫されています。そして、次のパートの冒頭には、ハジメのナレーションを使った、簡単な「前回までのあらすじ」と、容疑者一覧(各キャラの肖像をまとめて掲載)が付されるという親切設計。
ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』に学んだであろう、そして以後の金田一少年シリーズでも成功の方程式として多用されていくことになる、共感できる“怪人”像の明かされるクライマックス。
正直、本作のクライマックスで犯人の迎える最期は、あまりにお涙頂戴で、筆者はご都合主義のほうを強く感じる(ハジメに、あの“仕掛け”をそのままにさせておくのは、感動的なシーンを作りたい、作者の都合でしかない)のですが、それでも、

 こうして・・・・孤島のホテル『オペラ座館』で起きた殺人劇は静かに幕を下ろしたのだ

のあと、ある手紙が提示されるエピローグには、心地よい開放感を覚えます。ワトスン役(?)美雪のモノローグではじまったドラマが、最後にまた、ヒロインたる彼女のモノローグで閉じられる構成も良い。この、最終12ページが、本作の最良の部分でしょう。

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