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ミステリの祭典

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日本列島殺意の旅-西村京太郎自選集(4)

作家 西村京太郎
出版日2002年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2018/08/25 16:37登録)
世間的には夏休み(らしい)。
仕事でどこにも行けない憂さ晴らしをすべく、せめて読書で旅をというわけで本作をセレクト。
トラベルミステリーといえばやはり“西村京太郎”を置いて他になし! 徳間書店で編まれた自選集パート4。

①「恐怖の橋 つなぎ大橋」=舞台は盛岡の奥座敷・繋温泉。そしてそこに架かる「つなぎ大橋」。この地を訪れたふたりの男女が、幽霊を探しにつなぎ大橋へ出掛け、帰らぬ人なる・・・。ミッシングリンクがプロットの軸。
②「十津川警部の休暇」=奥さんとともに伊豆・伊東温泉を訪れた十津川警部(珍しい設定だ!)。泊まった温泉宿で遭遇したのは何と“殺猫事件”。まさかこの真相を解明するのかと思いきや、本筋は殺人事件の発生を未然に防ぐという、これまた珍しいプロット。
③「LAより愛をこめて」=もちろんLAも登場するのだが、メインの舞台は飛騨高山。いかにも作者が好きそうな街だ。で、本作だけは十津川警部ではなく、雑誌記者の寺内亜木子が探偵役を務める。人探しがメインだったのが、やがて奥に潜んでいたある事件が白日のもとに・・・という展開。
④「南紀 夏の終わりの殺人」=ずばり南紀白浜が舞台。これはラストにきて事件の構図が見事にひっくり返される。まぁありきたりと言えばそうかもしれないが・・・。
⑤「越前殺意の岬」=これぞトラベルミステリーというようなタイトルだね。永平寺に東尋坊、越前岬と近くの温泉まで、まさにガイドブックのごとく名所旧跡をご紹介してます。そして本作も②と同様、ある事件を防ぐために十津川警部が奔走する。

以上5編。
数多い作者の短編から選ばれるだけあって、①~⑤とも手堅い作品が並んでます。
もちろんすごいトリックやら切れ味鋭いプロットとは無縁なのですが、百戦錬磨の味わいとでも言うべき安定感!
これこそが作者の凄みなんだろうと思います。
十津川警部をはじめ亀井刑事、西本刑事や日下刑事などお馴染みのバイプレイヤーも登場。
これはもう、いわゆるひとつの「様式美」というヤツでしょう。

とりあえず、これを読んで旅に出た気に・・・なるわけない!
やっぱりどこか行くべきだな。時間と金があれば!

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