祝宴 競馬シリーズ(フェリックス・フランシスとの共著) |
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作家 | ディック・フランシス |
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出版日 | 2007年12月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 雪 | |
(2018/08/25 14:50登録) 史上最年少でミシュランのひとつ星を獲得したシェフ、マックス・モアトンは込み上げる腹痛を堪えていた。ニューマーケット2000ギニーレースの前夜祭、彼の経営するレストラン〈ヘイ・ネット〉で集団食中毒が発生したのだ。店舗の閉鎖にもめげず必死に仕事をこなすモアトン。その甲斐あってレース当日に催されたパーティーは大成功に終わるかに見えた。だが、突然の爆弾テロにより貴賓席は地獄となる。 辛くも難を逃れ独自に食中毒事件を調べ始めたモアトンだが、車のブレーキへの細工、自宅への放火など、明らかに標的にされたとしか思えない事件が続く。彼の命を狙う犯人は誰なのか? そして食中毒と爆弾テロとの関連は? 前々作「勝利」から愛妻の死により丸6年間筆を断っていたディック・フランシス。その後シッド・ハレー4度目の登場の前作「再起」で復活。そして今回初めて著者名に「フェリックス・フランシス」の名前が加わりました。息子さんとの共著です。 あとがきに「フェリックスが中心となってこの新作を推し進めることになった」とありますから、要所に父親のチェックは入っても、息子主体で完成したのは間違いないでしょう。シリーズ引継ぎをフランシス家・出版社が意図したとすると、どうしてもそうなると思います。しかし、つまらなくなったかと言えばそうでもない。シリーズイメージは大きく損なわれてはいません。登場人物の与える印象がやや弱くなったように感じるのは残念ですが。 アクション面ではどこまでも折れぬ鉄の意思を持つ主人公、どん底から這い上がる逞しさ、描写面では僅か数行で人物像や情景を描き出す巧みさ、そういった物を求めるのは難しいでしょう。血が繋がっているとはいえ別の人間なのですから。 ただ、ミステリ的な面白さはここ何作かに比べて上がっています。それなりの意欲を持って書かれた作品なのは間違いない。次回作を読みたいと思わせるだけのものはありました。点数は期待値込みの6点。 |