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ミステリの祭典

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横断
競馬シリーズ

作家 ディック・フランシス
出版日1989年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2018/08/20 16:08登録)
 英国ジョッキイ・クラブ保安部員トー・ケルジイの目の前でその男は崩れ落ちた。心臓麻痺だった。脅迫を繰り返して馬主からサラブレッドを奪い取る競馬界の敵、ジュリアス・アポロ・フィルマー追求への手掛かりがまたひとつ消滅したのだ。更に犠牲者の馬主が自殺、真相を知る厩務員の死と併せ、全ての道は途絶えたかに見えた。
 だがクラブは、フィルマーがロッキイ山脈を越えて驀進するカナダ競馬振興特別列車の旅客となるとの情報を掴む。ビッグイベントから不安要因を排除したいカナダ・ジョッキイ・クラブは英国側との共闘を選択し、フィルマーの企みを阻止する為の特別要員として、トーは〈壮大なる大陸横断ミステリ競馬列車〉に送り込まれる――。
 競馬シリーズ第27弾。「黄金」の次作にあたります。フランシス版「オリエント急行の殺人」。舞台はカナダ大陸横断列車・列車内で催されるミステリ劇・実際に起きるフィルマーの陰謀や妨害など趣向もてんこもり(別に車内での殺人とか無いですけど)。
 その割には無難に終わったなと。もっと面白くなっても良い筈なんですけどねー。フランシス作品中でも有数の長編で、列車のスケジュールと物語の流れがほぼ同期して進みます。一応読ませますがその辺は冗長に感じるかもしれません。長さの割にはメリハリが無いかな。大筋もどちらかと言えば凡庸な部類。
 作中作としてのミステリ劇は主人公がフィルマーに圧力を掛けるテコの役割を果たします。読む前はこれも面白いかなと思ったんですが案外そうでもありません。こういうのは本筋と密接に関連してないと生きてきませんね。とっちらかるだけです。
 印象に残ったのは主人公とクラブ側との連絡役を務める、カナダ・ジョッキイ・クラブ保安部長の母親ですね。声だけの登場ですが、他の誰よりも魅力的です。
 買える点もありますが、総合的に見て標準作。ネタ的に色々と勿体無いです。

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