(2018/08/18 21:47登録)
(ネタバレなしです) 戦時中の1942年にデビューした輪堂寺耀(りんどうじよう)(1917-1992)は、江良利久一、尾久木弾歩、東禅寺明、輪堂寺耀などのペンネームを使い分けてました。これだけでも十分にややこしいのですが、この中の尾久木弾歩は他の作家たちと共同使用したペンネームで、尾久木弾歩名義の作品全てが輪堂寺の作品という訳ではないことも混迷に拍車をかけてます。1950年に雑誌「妖奇」の第4巻第4号(1950年4月)から第4巻12号(1950年12月)の9回に渡って連載された本書はエラリー・クイーンの影響もろ出しの江良利久一が探偵役として活躍していることから輪堂寺の作に間違いないとされています。夕闇迫る緑雲荘の庭に般若面を被った怪人が目撃され、その晩第一の被害者は拇指を切り取られた死体となって発見され、現場には代わりに拇指の白骨が残されます。続いて人差し指の白骨が送られ、第二の犠牲者が人差し指を切り取られた死体となるという展開です。丁寧な現場見取り図を用意するなど本格派推理小説を意識したところもありますが推理説明でなく自供によって真相の大半が明かされているところから個人的にはサスペンス小説に分類します。後のシリーズ作品と比べると異常心理描写が生々しかったりしているのは好き嫌いが分かれると思います。
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