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ミステリの祭典

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傍流の記者

作家 本城雅人
出版日2018年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2018/08/10 07:47登録)
新聞記者たちの気高い活躍を描いている。新聞社の花形警部といわれた社会部だが、いまや政治部によって傍流に追いやられている。優秀な記者ばかりがそろった黄金世代の5人の社会部記者と、そこから外れた人事部の男の物語だ。
6話収録されているが、ミステリとして面白いのは女子大生殺害事件を追求する第1話「敗者の行進」、特命大臣の政治資金を徹底的に洗う第2話「逆転の仮説」、首相の口利き疑惑を探る第5話「人事の風」だろう。5年の支局経験をへて本社に戻ってくる記者たちの配属を決める第4話「選抜の基準」なども意外な展開ぶりで心憎い。
権力ににじりよる政治部に対抗する社会部の奮闘、手柄と出世競争、部下の教育、家族との軋轢などさまざまな事件を通して人間ドラマを深めている。短編連作でありながら長編としての骨格も堂々としており、プロローグとエピローグをはじめ、複数の脇役が丁寧に織られて本筋を支えているからたまらない。巧妙な人間ドラマの旗手、横山秀夫に通じる魅力がある。

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