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ミステリの祭典

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虚栄の掟―ゲーム・デザイナー

作家 佐藤大輔
出版日1997年11月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 人並由真
(2018/08/04 15:21登録)
(ネタバレなし)
 1990年代の半ば、家庭用ゲーム機の人気が袋小路に入り始める時代。神保町のゲームソフト開発企画発売会社「クロスアート」のゲームグラフィッカーだった「僕」は、ある日、社長から、社内の誰かが独立する気配があると聞かされた。「僕」は周囲のスタッフの動向に関心の目を向けるが。

 ゲームデザイナー出身の作家(主に架空戦記もの)で、少年時代はマクリーンやチャンドラーの愛読者だったという著者(2017年に52歳の若さで逝去)による、古巣のゲーム業界を舞台にしたミステリ。
 ……ということで期待して読んだのだが(ちゃんと裏表紙に「本格ゲーム・ミステリの決定版!」と謳ってあるし)、ミステリとしては薄味。別に殺人なんか起こらなくてもよいのだが、誰が企業的な内乱を企てているかのフーダニットかと思いきや、その辺の興味に強く応えたものではなかった。

 評者はこの人の作品は、中絶しちゃった世紀末ゾンビコミック『学園黙示録 HIGHSCHOOL  OF  THE DEAD』(原作を担当)しか縁がないのだが、関わったゲームや小説群には妙にカルト的なファンがいるようで、本書もAmazonではそれなりに古書価が高騰。これなら広義のミステリ的になんかあるんだろ、と思って手に取ったんだけどね。
 今となっては20年も前のゲーム業界最前線の描写なんか平成・考古学の話題だし(もちろん、それはそれで意味があるのだが)、その上であえて当時の現場にいたスタッフしか覗けないエッジの効いた人間描写とかあるかとも思ったが、その辺も存外に普通だった。さすがにところどころ、甘ったれた職業人に対してのクールでニヒルな視線はあるけれど、それがまあおおむね納得できるお怒りという意味で、逆説的にインパクトはない。
 まあ関心が向いた作品を気分のままに手にするのも読書の醍醐味だから、それはそれでいいんだけれど。

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