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ミステリの祭典

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死者の夢
87分署 別題『殺意の盲点』

作家 エド・マクベイン
出版日1978年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2018/09/23 20:36登録)
 刺すような寒風の吹く十一月のアイソラの夜、ハノン広場の銅像のそばで、盲導犬を連れた黒人、ジミー・ハリスが喉を掻き切られて殺された。ジミーと彼の妻は盲人同士の夫婦だった。スティーヴ・キャレラ刑事は彼らのアパートを訪れ、泣き伏す妻イザベルに死体の確認を依頼する。だが翌朝十時に再び彼が訪問した時、イザベルもまた惨殺されており、アパートは無惨に荒らされていた。
 物証皆無の事件に行き詰る捜査。キャレラはジミーの母親から、息子が除隊して以来、何度も魘されていたという情報を得る。悪夢から事件の手掛かりを掴むため、陸軍病院の記録を調べ始めるキャレラだったが、その頃アイソラでは三人目の盲人の犠牲者が・・・。
 シリーズ第32作。前にこの次の第33作目「カリプソ」が異色作であるとか言ってましたが、こっちの方が本質的にはアレじゃねえのかなと。少なくとも警察小説でやるような話じゃないですね。あまりにデリケート過ぎるというか。
 とにかく証拠らしい証拠がなく、直接的な手掛かりは被害者が見たというわけわかんない夢の内容だけ。最後にはいくつか物証が出揃いますが、それもあくまで補強材料でしかありません。これで最後まで引っ張るのがいっそ潔い。87分署物にしては400頁近くあって長いんですが、迷走につぐ迷走で300P過ぎてもまったく捜査は進みません。
 ところがある点に気付くと、一気に解決に向かうんですねこれが。それも明示ではなくあくまで暗示なんですが、そこを力技で読者に納得させてしまいます。やっぱり上手いなあ。
 ストレートではないんでこのシリーズの読者には必ずしも好かれないかもしれませんが、なかなかではないのかなと思います。最後の尋問の際、別件でジェネロがいじっていたビキニのパンティが、そのまま刑事部屋にほっぽらかしたままなのには笑いました。緊張感溢れる大詰めなのに。

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