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ミステリの祭典

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2018本格ミステリ・ベスト10
本格ミステリ・ベスト10シリーズ

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日2017年12月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 Tetchy
(2018/07/31 23:49登録)
今年も年末恒例の企画として刊行された『本格ミステリ・ベスト10』。特に2017年は新本格ミステリが30周年を迎えた年としてその特集号となっている。
まずはその新本格30周年を迎えた記念すべき年のランキングを制したのはなんと『このミス』同様、鮎川哲也賞受賞作である新人、今村昌弘氏の『屍人荘の殺人』だった。これで本作はなんと週刊文春の年間ベストランキングも制し、新人のデビュー作にして初の3冠達成という偉業を成したことになる。今までそんな作品はヴェテラン作家でさえ成し得なかったことだ。これはまさに30周年に相応しい“事件”だと云えよう。

そしてその後のランキングは、まさに「本格ミステリ」に焦点を当てているだけあって、『このミス』とは異なるランキングとなっているのが嬉しい。近年本格ミステリが台頭してきて『このミス』とのランキングの近似性が目立っていただけにこのオリジナリティは実に楽しい限りである。

今回の特集に目を向けると、やはり上に述べたように新本格30周年の特集が光る。法月綸太郎氏、三津田信三氏、青崎有吾氏の本格三世代座談会は実に世代性が色濃く出て、実に面白かった。同じ本格ミステリを書きながら、読書歴は異なるところ、特に青崎氏は法月氏ら新本格第1世代からの読者であることや海外ミステリから入っていきながらも昨今の出版状況で絶版が多くて法月氏のように十分に読みたい本が読めないことなどが述べられていて、私ですら世代差を感じた。

更に新本格の30年の歩みとして発表作品の変遷、更に30年間で生み出された本格ミステリの各カテゴリーにおける傑作や扱われたテーマなどについてコラムが付されており、まさにミステリ濃度100%の内容だった。もっとページを増量して更にディープに特集してもいいくらいだと思った。

今回も例年通り、内容の充実ぶりにたっぷり堪能させられた。
やはり自分の中には本格ミステリへの渇望感が常にあるのだ。毎回このムックを読むとこの本格ミステリ好きマインドが胸を焦がし続ける。
そんな積読本が多い状態でまたも無視できない新人が登場した。今村昌弘氏の作品はもう私の本棚の一画を占めることが決まったも同然だ。

そしてまた私は増え続ける蔵書を前に途方に暮れるのである。それでもなお今年もまた読み逃せない傑作が生まれることを期待しよう。
とにかく読まねば、読まねば。

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