(2020/05/28 21:04登録)
(ネタバレなしです) 1995年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第13作の本格派推理小説で、文春文庫版で650ページ近い大作です。前半がイギリス編、後半がアメリカ編(但しイギリスでの活動も描かれます)の構成ですが、この前半での懐古趣味が半端ではありません。私が気づいただけでも「「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察」(1983年)、「「エルサレム」亭の静かな対決」(1984年)、「「古き沈黙」亭のさても面妖」(1989年」、「「老いぼれ腰抜け」亭の純情」(1991年)に登場した人物たちが回想されたり再登場したりしています。世間は狭いな(笑)。一応3人の女性の急死事件を捜査しているのですが死因もはっきりしない(自然死かもしれない)、アメリカのサンタフェを訪れたり住んでいた程度の共通項しかないというのにこの状況証拠だけでジュリーが渡米するというとてつもなく強引な展開、そこに至るまでに300ページを費やしています。過去シリーズ作品を読んでいた私は懐かしさもあったし、この作者の文体が好きなのでそれほど退屈しませんでしたが、ほとんどの容疑者とジュリーが顔合わせするのがやっと後半というのでは冗長すぎると感じる読者も多いかも。それにしても犯人の犯行計画、かなり杜撰な印象を受けました。
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